日本歴史時代作家協会 公式ブログ

歴史時代小説を書く作家、時代物イラストレーター、時代物記事を書くライター、研究者などが集う会です。Welcome to Japan Historical Writers' Association! Don't hesitate to contact us!

『映画に溺れて』第353回 好きと言えなくて

第353回 好きと言えなくて

平成八年七月(1996)
日比谷 シャンテシネ3

シラノ・ド・ベルジュラック』を観て、思い出したのがこのラブコメディ『好きと言えなくて』
 アビーはラジオのペット相談室のパーソナリティ。番組を通じてカメラマンのブライアンと知り合う。ラジオなのでお互い顔はわからない。ブライアンに外見を聞かれ、アビーはつい見栄を張って長身のブロンドだと答えてしまう。実際は小柄で太めで地味で目立たないのだが、どうせ会うことなんてないのだからと。
 ところが、魅力的な声のアビーに惹かれ、ペット相談の礼を言いにブライアンがラジオ局まで訪ねてくる。たまたまスタジオにアビーの仲良しのモデル、ノエルが遊びにきていて、ブライアンは親切なパーソナリティがこんな美人だったのかと驚き一目ぼれ。ノエルをアビーと思い込み、デートに誘う。が、ぎくしゃくして会話ははずまない。ノエルから渡された電話番号はアビーのもので、ブライアンが夜電話すると、楽しい会話が朝まで続く。
 つまり、彼は外見ではノエル、会話ではアビーを好きになるのだ。
 アビーは楽しく会話のできるブライアンに惹かれ、ノエルも彼の純粋さに心動かされる。が、お互いの気持ちがわかって、どちらも身を引こうとする。真相を知って、ブライアンはどうするのか。彼はどちらかの女性を選ぼうとするのか。
 ユマ・サーマンふんするノエル、少し軽薄ではあるが、決してステロタイプの意地悪なバカ女ではなく、現状に満足せず向上しようとしており、アビーとの友情も大切にしたいと思っているやさしい女性である。
 ジャニーン・ガラファロのアビーも背の低さに多少とも劣等意識を持ってはいるが、決して不美人ではなく、賢くて可愛い。だから、単純な二元論的比較にはならないはずで、どんなタイプの女性にも、それぞれ魅力があるということなのだ。

 

好きと言えなくて/The Truth about Cats & Dogs
1996 アメリカ/公開1996
監督:マイケル・レーマン
出演:ジャニーン・ガラファロ、ユマ・サーマンベン・チャップリンジェイミー・フォックス