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文芸評論家日乗 2018年パリ旅行(2)

 ルイ・ヴィトン財団美術館の後は、今回の目的の一つ、マルモッタン・モネ美術館ヘ向かいました。徒歩30分ほどの道のりをのんびり歩いて行ったのですが、ブローニュの森はサイクリング・コースになっているのか、自転車のチームが何組も走っていました。マルモッタン・モネ美術館は世界最大のモネのコレクションを有し、貴族の館を改装した建物も見たいと考えていました。が、残念ながら休館。外観だけを撮影して帰りました。

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 そこからメトロで、トロカデロ庭園に向かいました。ここはエッフェル塔をのぞむ絶好の観光スポットになっていて、全世界から集まったものすごい観光客がいます。

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私たち夫婦もエッフェル塔を前に記念撮影をしましたが、目的は庭園内に建つ双翼のシャイヨ宮の片側ほぼ全部を占める人類博物館です。この博物館は、人類の進化、人体の仕組み、様々な人種とその生活洋式や文化などが総合的に展示されていました。
 シャイヨ宮は、1878年のパリ万博の時に建てられたパビリオンです。19世紀の欧米は植民地獲得競争の激化でアジア、アフリカに勢力を拡大し、またダーウィンの進化論の浸透もあって、西洋の文化を頂点とし、まだ西洋のレベルに達していないアジア、アフリカ諸国の文化を劣ったものとして序列化していました。そのため19世紀の欧米では、白人以外の異民族を見世物にする人間動物園が人気を集め、1878年のパリ万博でも黒人が展示されています。アジアでいち早く近代化した日本も、1903年に大阪で開かれた第5回内国勧業博覧会で、アイヌ、台湾高砂族沖縄県人、大韓帝国、清国、インド、ジャワなど民族衣装を着た32名を展示するパビリオン「学術人類館」を設置したため、沖縄県と清国が抗議し大問題になった「人類館事件」を起こしています。学問の歴史と発展のプロセスを概観するため19世紀的な人類学の成果も展示してあった人類博物館を見学して、学問、研究は一歩間違うと差別を助長する状況を作り出しかねない現実が実感できました。個人的に興味深かったのは、統計によって人種の特徴を探ろうとした時代に作られた頭蓋骨の測定器。イタリアの精神科医で人類学者のロンブローゾは、こうした測定器で処刑された囚人の骨を計測し、犯罪者には特定の身体的、精神的な特徴があるとの説を導き出しました。この「生来的犯罪人説」は、夢野久作ドグラ・マグラ』や小栗虫太郎黒死館殺人事件』など戦前の探偵小説でも紹介されていますが、現在では科学的な根拠がないと否定されています。ロンブローゾの学説も、非常に差別的なものといえます。

 人類博物館を出て、トロカデロ庭園を散策しました。中央部に大きな人工の泉水があるのですが、そこで大勢の人が水着で水浴びをしているのに驚きました。
 イエナ橋を渡り、エッフェル塔が建つシャン・ド・マルス公園へ。この辺りは観光客であふれていて、ラッシュ時のターミナル駅を思わせるほど混雑しています。公園を突っ切ってメトロの駅へ向かい、そこからホテルに帰りました。

 今回は短期の滞在だったので、ホテルやカフェなどで使えるFreeWi-Fiだけで大丈夫だと思っていたのですが、やはり街中でネットが使えないと不便だと分かり、現地のプリペイドSIMを買うことにしました。選んだのは昨年と同じFree mobile。店がマドレーヌ寺院の近くにあるので、ホテルから歩いて行きました。購入したのは、19ユーロ99セント(+SIMの代金10ユーロ)で、1カ月100ギガ(+無料通話付き)使えるSIMです。自動販売機でSIMを購入し、普段使っているSIMフリーiPhoneに差し換え、PINを入力すればすぐに開通します。ちなみに4日間の滞在中、iPhoneルーター代わりにしてiPad2台を常時接続していましたが、通信量は15ギガくらいでした。昨年はメトロに乗ると3G回線になっていましたが、今年は4Gで繋がる範囲が増えたような気がします。

プリペイドSIMは1カ月で自動的に使用不可になりますが、昨年は、なぜか自動解約にならず(おそらく諸事情で日本にかけまくった国際電話で無料通話分を使い切ったため、翌月以降に代金を請求する必要があると判断されたからと考えています)、書面で解約手続きを取りました。ネットではFree mobileは解約が難しいとの声もありますが、最初に送られてくるメールに添付されたPDFファイルの末尾に解約用の書面があるので、それに必要事項を書き込むだけです。日本の携帯会社も、書面の郵送で解約手続きを行うところもあるので、それほど面倒とは思いませんでした。なお、今年は無事に1カ月で自動解約となりました。

 ネット環境を手に入れた後は、夕食と翌日の朝食の買い出しにモノプリへ行きました。モノプリは高級スーパーで、日本でいえば成城石井といった感じでしょうか。そこでサラダ、サンドイッチ、ビール、ミネラルウォーターなどを購入してホテルへ帰還。1日目が終わりました。

●パリは物価が高いです。駅の自動販売機で500ミリのペットボトルのジュースを買うと2ユーロくらい。観光地の売店では、もっと高いこともあります。スーパーの割引品だと、1.5リットルのペットボトルが1ユーロ以下で買えることがあるので、それを買って街歩きの時に持ち歩くと経済的です。モノプリで買ったのも、1.5リットルで99セントの炭酸入りミネラルウオーターでした。