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大河ドラマウォッチ「西郷どん」 第38回 傷だらけの維新

 今週も軽くツッコんでいこうと思います。
 上野の彰義隊は壊滅させることができました。しかし会津をはじめとする東北各地の諸藩は抵抗を試みています。
 軍議の席で大村益次郎(林家正蔵)は、兵も金も兵糧も武器も足りないと言い出します。西郷に薩摩からそれらを出すように要求します。西郷はそれを引き受けます。
 西郷は援軍を編成するため、薩摩に戻ります。
 西郷は久々に家に帰ってきました。ここも戦のように大変だったという話を聞きます。遠い親戚や古い友と名乗る人々が訪ねてきたのだそうです。西郷の名に傷がつかないよう、家を守る吉次郎は、金を渡して帰したのだそうです。したのだそうです。
 西郷は薩摩の城に上がり、久光に会います。大村からの要求を理解した久光は渋い顔をします。西郷はいいます。
「薩摩の忠義と底力を、必ずや天下にお見せできるでありましょう」
 相変わらず久光だけは転がすのがうまいな、西郷は。久光は承諾し、すべてを西郷に任せます。
 家に帰ってきた西郷は、吉次郎から、戦に連れて行ってくれと頼まれます。自分も戦働きがしたいというのです。共に参れ、と西郷は承諾します。
 吉次郎や信吾は、西郷に先駆けて越後に出発します。
 吉次郎が薩摩を発って数日後、長岡での苦戦が伝えられます。西郷に来てくれるようにと要請がされます。
 越後に到着した西郷のもとには、長岡だけでなく、東北各地からの援軍依頼がやってきました。軍議が開かれます。そこへ信吾が駆け込んできます。吉次郎が撃たれたことを伝えます。
「兵の命は皆同じじゃ。弟だろうが誰じゃろうが、これだけ命をかけているもんがおるとじゃ」
 西郷はそう言いますが、動揺を隠しきれません。西郷は軍議を続けます。
 西田敏行のナレーションによって、北越戦争が激戦の末、終結したことが語られます。
 西郷は越後の陣を訪れ、兵たちに声をかけて回ります。そこには吉次郎もいたのです。西郷は吉次郎を抱き起こします。
「侍働きができて、うれしかった」
 という吉次郎。吉次郎は西郷の腕の中で息を引き取ります。
 そして西田敏行のナレーション。
「この後も会津、庄内、そして函館と、戊辰の戦はつづきました。そんな中、日本は明治へと新しく生まれ変わり、大久保一三を始め、岩倉や桂、そして西郷吉之助といった面々による、明治政府が動き出そうとしていました」
 えーっ、マジかよ。飛ばしすぎだろう、中園ミホ。大胆というか何というか。会津の戦いも函館戦も省略かよ。読んだ西田敏行もきっとびっくりだよ。
 江戸城は東京城と改められ、明治天皇の新しい住まいとなりました。
 そして西郷と大久保はテーブルを挟んで向かい合います。西郷は切り出します。
「おいは薩摩に帰らせてもらいたか」
 再び、えーっ。めまいのするようなすごい省略。ミホよ、そうきたか。
 大久保は西郷が席を立った後、笑い出します。どうかしたのかとおもったら、そのあとテーブルたたいて怒りをあらわにします。そりゃそうだろう。
 西郷は薩摩の自分の家に帰ってきます。家の者に吉次郎のことを聞かれます。西郷は吉次郎の妻、その、に遺髪を渡します。
「すまん。死なせてしもうた」
 西郷の妻、糸は、西郷に吉次郎の残したものを見せます。それは帳面と瓶に入った銭でした。吉次郎は西郷がまた何かを思いついたときのために、小銭を少しづつ貯めていたのです。帳面を見ると、それは家計簿でした。家の金銭の出入りが細かく記されていました。ここで西郷は吉次郎のために初めて慟哭するのです。
 中園ミホの大胆さに驚かされた今週でした。