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大河ドラマウォッチ「西郷どん」 最終回 敬天愛人

 今週も軽くツッコんでいこうと思います。
 明治十年。延岡。西郷たちは菊次郎や糸を残し、出発します。鹿児島の地に帰ろうというのです。
 西田敏行のナレーション。
「政府軍をかわしながら、ひたすら道なき道をたどってゆく西郷軍。歩いた距離は、450キロにも及びました」
 そして一行は鹿児島に帰り着くのです。延岡を発って14日が経過していました。
 しかし鹿児島の街は政府軍に占領されていました。桐野利秋がいいます。
「先生、おいたちの薩摩を奴らから奪い返したか」
 西郷は返事をします。
「よか。そいならおはんらともう一暴れしようかい」
 西郷たちの表情に明るさがともります。
 再び西田敏行
「西郷軍は故郷鹿児島で、はつらつと戦いました。しかし反撃もここまで。政府軍の圧倒的な攻撃力に加え、陸と海から駆けつけた大軍にも包囲され、西郷軍は山の上へと押し戻されていきました」
 菊次郎や糸たちは、従道に連れられて鹿児島の家に帰ってきました。
 城山に追いつめられた西郷たちは沈み込んでいました。しかし新八のアコーディオンの演奏などあり、次第に明るさを取り戻していきます。
 西田敏行のナレーション。
「隆盛が城山にこもって二十日あまりが過ぎ、ここまで生き残った仲間たちは372人」
 鹿児島の政府軍本営では、総攻撃への軍議が行われていました。しかし山県有朋はそれをためらっています。山県はいいます。
「ここにおるもんで、西郷さんの好意にあずからんかったものがおるか。西郷さんが賊になり下がったと、心から思うとるもんがおるか」
 そこに大久保から電信が届けられます。内容を見て、従道が
「城山の兄に伝えます」
 と走っていきます。
 西郷は従道からの手紙を受け取り、内容を皆に伝えます。
「大久保卿が総攻撃の命令をくだした。明朝四時。ただし、本日夕刻五時までに降伏すれば、賊西郷隆盛の命は助ける」そして西郷は微笑みます。「甘かのは、おはんじゃ一蔵どん。おいに情けをかければ、自分で自分の首をしめることになっど。こげな情けは受けられん」
 しかし桐野がいいます。
「受けてくいやんせ。先生だけは生きてくいやんせ」
 他のものも口々に西郷に頼みます。辺見十太朗が言います。
「西郷先生さえ生きておられれば、いつかまた誰かが立ち上がることもできもす」
 その頃、東京では、内国勧業博覧会が行われようとしていました。大久保が外国人たちを案内します。大久保は質問されます。鹿児島は戦争の最中だと聞きました。そのようなときに博覧会など催していて大丈夫なのですか。大久保は答えます。
「心配ご無用。もうすぐ戦は終わります。いや、日本から、戦そのものがなくなります」
 そして大久保は時計を見るのでした。
 鹿児島の政府軍の軍議の席では、従道も時計を見ています。夕刻五時まであと少し。
 場面は城山の西郷軍に戻ります。西郷はいいます。
「ありがとなあ。じゃっどん、ここは死なせてくれやい。こん国から戦をなくすためにも、おいは死なねばならんとじゃ。おいが死ねば、日本国中の士族たちが、ようやく別の生き方を見つけようちすんじゃろ。おいの死と共に、あたらしか日本が生まれるとじゃ」
 西郷の言葉に暗さはありません。微笑みながら皆に語りかけます。新八がいいます。
「そいに、吉之助さが、おはんらだけを死なすわけがなかとが」
 西郷は皆に微笑みかけます。
「そんとおりじゃ」
 といって従道からの手紙を破るのです。
 時刻は五時を過ぎました。従道は時計を握りしめます。
 東京の博覧会の席では、大久保が電信を受け取ります。
「吉之助さ」
 とつぶやく大久保。大久保は博覧会開催の演説をしようとしますが、言葉を続けることができません。
 城山は夜になり、西郷たちは食事をしていました。桐野がおどけて皆にいいます。
「こいはひったまがった。明日、死ににいくっとちゅうとに、楽しくて笑いがとまらん」皆も笑い声を立てます。「西郷先生も笑っておられると」
 西郷もいいます。
「おはんら、ほんのうでよう戦った。じゃっどん百姓や町人の政府軍はなかなか強かな。こいなら外国がいつ攻めてきても十分戦えっど」
 夜が明けます。四時になりました。ついにそのときが来たのです。西郷が皆に言います。
「よかか、おはんらが侍の最後をつとめるんじゃ。日本の誇りじゃ」
 男たちはときの声を上げてそれに応えます。政府軍の砲声が鳴り渡ります。西郷軍のそばにも砲弾が落下します。西郷は笑顔で、
「チェストー。きばれ」
 と皆を励ますのでした。そして走り出します。
 激闘に侍たちが次々に倒れていきます。桐野は川路に撃たれ、新八はみずからの腹を刺します。
 そして西郷も腹に弾丸を受けるのでした。
 西郷の家では糸が城山に頭を下げていました。
「おやっとさあでございました」
 大久保は屋敷に帰り着くと、妻から西郷のことを聞かれます。
「吉之助さ」
 と大久保は慟哭するのでした。
 人々はこの頃、日本の空に近づいた火星を西郷星と名付けてあがめ、その死を悼みました。
 そして西郷が死んだ翌年、大久保は暴漢に殺されるのでした。
「おいは、まだやらねばいかんこっがある」
 と言い残して。
 時には力業でねじ伏せるような展開。繊細にして大胆な脚本。中園ミホは新しい西郷像を造り、いや、まとめ上げました。
 中園ミホ先生、スタッフの皆さん。本当にお疲れ様でした。