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『映画に溺れて』第152回 死霊の盆踊り

第152回 死霊の盆踊り

令和元年八月(2019)
池袋 新文芸坐

 

 あまりのくだらなさに、それがかえって一部のファンの興味をそそり、話題になるという不思議な現象である。
 もちろん、世間にはまったく話にならないほどくだらない最低映画は山ほどあり、そこそこ有名な監督が人気芸人やアイドル主演で適当に作った駄作、演技が下手で脚本がスカスカでスタッフが稚拙で、思わずため息、途中で席を立ちたくなるようなのがいっぱい。監督や興行会社に遠慮してか、そんな最低作を持ち上げる輩さえいて、実に不愉快である。
 が、『死霊の盆踊り』はそんな中途半端な愚作ではない。
 オープニングは棺桶から現れるベラ・ルゴシ風の夜の帝王。観客に向かって、これから起きる不思議な物語にみなさんを誘うと語りだす。
 夜の墓地に迷い込んだカップル。そこでは夜の帝王とカーミラ風の闇の女王が墓に眠る女の幽霊たちを次々と召喚している。呼び出された女幽霊たちはひとりずつ順番にダンスを披露するのだ。最初はみな着衣だが、すぐに着ているものを脱ぎ捨てて、裸になる。ストリップティーズである。これがとっかえひっかえ十人近く、延々と続く。オカルト風の思わせぶりなストーリーは付け足しで、メインは幽霊女たちの裸踊り。中にはダンスが上手でスタイルのいい美女もいて、一応は目の保養ということになる。それが目的の映画だから。
 それにしても、ここまでくだらないと、日本で初公開時のキャッチフレーズが「世紀の駄作」、しかも邦題が絶妙な『死霊の盆踊り』とくれば、それなりに話題になる。これはこれで、一見の価値あり。
 脚本はエド・ウッド。帝王役のクリズウェル以外はほとんど素人らしい。因みにティム・バートン監督『エド・ウッド』のオープニング、ジェフリー・ジョーンズ扮するクリズウェルが棺から起き上がり、エド・ウッドの伝説を語り始める。まさに『死霊の盆踊り』のオープニングそのまま、オマージュになっているのだ。ティム・バートン、さすがである。

 

死霊の盆踊り/Orgy of the Dead
1965 アメリカ/公開1987
監督:A・C・スティーブン 脚本:エド・ウッド
出演:ウィリアム・ベイツ、パット・バリンジャー、クリズウェル、ファウン・シルヴァー