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『映画に溺れて』第503回 SHERLOCKシャーロック 忌まわしき花嫁

第503回 SHERLOCKシャーロック 忌まわしき花嫁

平成二十八年一月(2016)
新橋 スペースS汐留

 

 二〇一〇年から始まったBBCのTVシリーズ『SHERLOCKシャーロック』はコナン・ドイルの原作を踏まえながら、舞台を二十一世紀、現代のロンドンに設定している。ベネディクト・カンバーバッチのホームズはパソコンを使って推理し、タクシーで犯人を追い、マーティン・フリーマンのワトスンはインターネットのブログで事件の手記を公表する。原作に登場する脇役のハドソン夫人、レストレード警部、マイクロフト、メアリ・モースタン、悪役のモリアーティもすべて現代人である。
 ホームズを現代に置き換えるというアイディアは好評で、三シーズン九作のTVシリーズが放送された後、今度は特別版として『SHERLOCKシャーロック 忌まわしき花嫁』が英国で放映され、わが国では劇場公開された。
 この特別版の見どころは、舞台設定が十九世紀末のヴィクトリア朝時代であること。つまり、現代版『SHERLOCKシャーロック』の配役がそのままコナン・ドイルの世界を演じるという趣向なのだ。霧のロンドンを馬車が走り、鹿撃ち帽にインヴァネスコートのカンバーバッチがパイプをくわえて登場する。
 ウェディングドレス姿の既婚女性による銃の乱射と自殺事件。
 レストレード警部の依頼で、ホームズとワトスンは死体安置所に犯人リコレッティ夫人の亡骸を検分する。
 その夜、死んだはずのリコレッティ夫人が夫を射殺する。自殺したはずの女性による殺人。その謎を解明するうち、第二の事件が。
 コナン・ドイルの原作中、ワトスンが題名のみ表記した事件が数多くあり、語られざる事件と呼ばれる。
『マスクレーヴ家の儀式書』の中でワトスンは「足の悪いリコレッティと忌まわしい妻」の事件に触れているが、それがこの『忌まわしき花嫁』なのだ。

 

SHERLOCKシャーロック 忌まわしき花嫁/SHERLOCK The Abominable Bride
2016 イギリス/公開2016
監督:ダグラス・マッキノン
出演:    ベネディクト・カンバーバッチマーティン・フリーマン、マーク・ゲイティス、アマンダ・アビントン、ルパート・グレイヴス、ルイーズ・ブリーリー、ユーナ・スタッブス、ナターシャ・オキーフアンドリュー・スコット