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大河ドラマウォッチ「いだてん 東京オリムピック噺」 第22回 ヴィーナスの誕生

 物語は後の古今亭志ん生美濃部孝蔵(山本未來)から始まります。孝蔵に真打ち昇格の話が持ち込まれます。さらに清さんと小梅(橋本愛)から見合いを進められます。小梅が言います。孝蔵がしょうがないのは独り身のせいだ。
「所帯持ったらそうはいかない。自然と腹がすわるもんなの」
 話がうますぎる。まとまるわけはないという孝蔵。ところがとんとん拍子に話が進み、孝蔵はりん(夏帆)と結婚してしまうのです。しかし結婚したその日うちに孝蔵は出かけていきます。目的は賭け事と遊郭です。
 一方、東京府立第二高等女子校(通称・竹早)に赴任した金栗四三。女子体育を普及する理想に燃えていました。当初は四三を毛嫌いしていた女子生徒も、四三の情熱に動かされ、体育に熱中していきます。
 村田富江(黒島結菜)と梶原(北香那)はテニスウェアを自作し、熱狂的な支持を受けます。各地のテニス大会に招かれ、運動界のアイドルになりました。
 富江たちは雑誌の取材を受け、四三を以前はオリンピック先生、今では「パパ」と呼んでいる、と話します。
 富江たちはミルクホールでどうしたらシャン(美人)になるかを話しています。そういえば陸上選手の足ってシャンよね、と一人が言い出します。富江たちは四三の下宿に押しかけます。四三に足を見せてくれるように要求するのです。やはり陸上をやると足がシャンになると確認する富江たち。四三に走り方を教えてくれるように頼むのです。
 四三が生徒たちと街を走る頃、四三の下宿ではスヤ(綾瀬はるか)とシマ(杉咲花)が話していました。シマは妊娠したことをスヤに打ち明けます。しかしシマは浮かない顔です。
「結局あたし、何も成し遂げていない」
 教員としてもランナーとしてもこれからなのに。四三は喜んでくれるかと心配します。怖い顔で帰ってくる四三。
「でかした」
 と、シマを抱きしめるのです。
 シマは恩師の二階堂トクヨ(寺島しのぶ)にも妊娠を報告します。
「いよいよ私は、女子体育と心中する覚悟を決めたのです」
 というトクヨ。トクヨは、わたしがやらねばいけない、と女子体育の学校を創設することを決意するのでした。二階堂体操塾、現在の日本女子体育大学です。
 さて、竹早の村田富江と梶原は岡山の高等女子学校に招かれていました。そこで二人のテニスの相手をしたのが、人見絹枝(菅原小春)でした。絹枝は
「男みてえじゃ」
 とはやし立てられます。
 なぜか絹枝は一人で竹早のペアと対戦します。恐ろしいほどのパワーで富江たちを圧倒する絹枝。
 絹枝を教室で見かけたシマは、声をかけます。勝ちたいと思うことがねえんです、と絹枝は言います。
「勝つとばつさいじゃとかぼっけえ男じゃとかばけもんじゃとかいわれるけん。勝っても嬉しゅうね」
 シマは四三に、絹枝が陸上をやったら大成するのではないか、といいます。四三は絹枝が陸上向きかどうか足を触ってみます。あまりのことに四三蹴り飛ばす絹枝。
「本が好きじゃけん、文学部に進むつもりです」
 と言い捨てて絹枝は去って行きます。
 さて、翌年、四三の妻のスヤは雅子を出産。このあともスヤは東京に出てきては子を授かり、熊本に帰るをくりかえし、最終的に一男五女をもうけることになります。シマも女の子を出産していました。
 四三は女子の陸上大会を企画します。オリンピック出場の夢の第一歩です。
 女子陸上大会は盛況のうちに行われました。元天狗倶楽部の吉岡(真島真之介)は
「体育の普及は、女性美を破壊するものだと思っていたが、違うね。じつにすがすがしい」
 と言います。
 村田富江がハードル競技を走る番になります。シューズがうまく靴にはまりません。富江は靴下を脱ぎ捨て、素足にてシューズを履きます。色めき立つ取材陣たち。この大会で村田富江は、五十メートル、百メートル、五十メートル障害の三つに出場し、全種目で優勝しました。
 しかし村田富江の父親が学校に乗り込んでくる事件が起こるのです。富江の父親、村田大作は、富江の走る写真を机にたたきつけ、こう叫びます。
「大切な娘を竹早に入れたのは、人前で足をさらけ出すような、おてんばにするためではありません」
 自分の意思で脱いだんです、と父に抗弁すると富江。しかし大作は富江を連れ出そうとします。
「何を考えとるんだ富江。おなごが人前で足を丸出しにするなんて、もう嫁にはいけんぞ」
 それをとめる四三。おなごが足を出して何が悪い。
「好奇の目にさらされるからだ。娘の体が」
 と大作。
「それは男が悪か。女子には何の非もなか。女子が靴下ばはくのではなく、男が目隠しばしたらどぎゃんですか」四三は続けます。「脱いだ方がスピードが出っとです。脱いだおかげで、娘さんは日本一になったとですよ。なしてそこばほめてやらん」
 最後に四三は押しかけてきた男たちに言います。
「あんたらがそぎゃんだけん、女子スポーツはいっちょう普及せん。いつまっでんヨーロッパには勝つてんとです」
 しかしこれで引き下がる大作ではありませんでした。大作は四三を免職にする署名を集めていたのでした。
 それを知り、富江をはじめとする四三の教え子たちは、教室に立てこもります。金栗先生は絶対に辞めさせないわよ、と誓い合います。
 富江たちの立てこもる教室の前に、四三がやってきます。
「村田(富江)、梶原」と両名の名を叫びます。