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『映画に溺れて』第385回 ゴッド・アンド・モンスター

第385回 ゴッド・アンド・モンスター

平成十四年二月(2002)
池袋 新文芸坐

 一九三一年のユニバーサル映画『フランケンシュタイン』はボリス・カーロフ演じる怪物で有名だが、それを監督したのが英国生まれのジェームズ・ホエール。引退後、一九五七年五月にハリウッドの自宅プールで溺死した。いったいなにがあったのか。
 老いたホエールは新しい庭師のブーンに目をつけ、絵のモデルになってもらう。
 ブーンは高名な監督と親しくなれて、単純に喜んでいる。が、ホエールにゲイだと打ち明けられ、いったんは激怒して逃げ出すも、また戻ってくる。
 ホエールはジョージ・キューカーのパーティにブーン同伴で出席する。主賓のマーガレット王女はホエールを雇われカメラマンと間違える。上流界や芸能界と無縁の庭師ブーンはパーティで場違いだが、引退した映画監督もまた居場所がなかったのだ。
 この夜、家政婦が外出していて、ホエールはブーンを口説くが拒否される。ホエールの幻影の中で、ブーンがフランケンシュタインの怪物のように現れる。朝、庭師が目覚めると、老いた監督はプールに浮いていた。
 時が流れ、ホエール監督の『フランケンシュタイン』がTVで放映されている。居間でTVの前の子供が目を輝かせている。子供は怪奇映画が好きなのだ。いっしょに見ている父親はブーンである。妻が食器を洗っている。小市民の食後の団欒。
「この映画の監督と友達だったんだ」とブーンが子供に言う。
「また、お父さんのホラが始まったわ」と妻。 彼は妻に隠れてそっと一枚の絵を取り出す。怪物を描いたホエール監督直筆のスケッチ。ブーンの名があり、「友より」とのサイン。
 家庭を持ち、妻と子供とささやかに暮らしているブーン。ゴミを捨てに表に出て、ふと夜空を見上げる。そこに『フランケンシュタイン』を模したエンドクレジットが流れる。
 ホエール監督を演じたイアン・マッケランもまた、同性愛者であることを公表している。

 

ゴッド・アンド・モンスター/Gods and Monsters
1998 アメリカ/公開2000
監督:ビル・コンドン
出演:イアン・マッケランブレンダン・フレイザー、リン・レッドグレイヴ、ケヴィン・J・オコナー、ロリータ・ダヴィドヴィッチ、デヴィッド・デュークス