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『映画に溺れて』第347回 20世紀少年

第347回 20世紀少年

平成二十一年八月(2009)
三軒茶屋 三軒茶屋シネマ

 

 三軒茶屋には以前、映画館がいくつもあった。『20世紀少年』と『20世紀少年第2章』を二本立て通しで観たのも、この町だった。
 小学生の子供たちが遊びで描いたディストピアが将来、現実化するという恐怖。
 二十世紀末、謎の新興宗教が細菌兵器を使って都市を混乱に陥れ、それに乗じて政界進出を企てる。
 町のコンビニ店長ケンジは小学校の同窓会でかつての仲間、原っぱで秘密基地を作って遊んだ友人達と再会。世間を騒がせ社会問題になっているカルト教団の話題が出るが、その教団のシンボルマークに見覚えがあり、ケンジは思い出す。小学生時代にみんなで考えた遊び、未来の予想図。スケッチブックに書かれた「よげんの書」では、二十世紀末に「悪のそしき」が世界征服のために動き出し、細菌兵器で都市を混乱させるという予言。そこには一九六〇年代当時の少年漫画雑誌「サンデー」や「マガジン」の内容とともに、アポロ月世界着陸や大阪万国博が反映され、その未来図を書いたのは幼いケンジだったのだ。
「よげんの書」は大阪の壊滅、羽田空港の破壊と続くが、三十年後の今、それが現実世界で実際に起きている。実行している「悪のそしき」は謎のカルト教団らしい。
 教団の力が強大となり「よげんの書」が実現すると、この世界は破滅する。世界征服を企む新興宗教の教祖は、あの原っぱの秘密基地の仲間のひとりに違いない。
 ケンジのもとに、今は中年となったかつての有志が集まり教団の犯罪に立ち向かう。
 現実のカルト教団による犯罪事件を巧みに織り込んだストーリーの面白さに加え、配役が豪華で見応えあった。

 

20世紀少年
2008
監督:堤幸彦
出演:唐沢寿明豊川悦司常盤貴子香川照之石塚英彦宇梶剛士宮迫博之生瀬勝久小日向文世佐々木蔵之介石橋蓮司、仲村嘉葎雄、黒木瞳、ARATA、遠藤憲一及川光博竹中直人森山未来徳井優竜雷太光石研津田寛治片瀬那奈、石井トミ子、吉行和子研ナオコ