日本歴史時代作家協会 公式ブログ

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大河ドラマウォッチ「鎌倉殿の13人」 第45回 八幡宮の階段

 健保(けんぽう)七年一月二十七日。

 夕方から降り続けた雪は、強さを増していました。

 警護の詰め所にいる三浦義村(山本耕史)の肩を、北条義時(小栗旬)が叩きます。三浦は驚きます。

「どうしてここにいる」

「外されてしまった」

 と、義時は答えます。源仲章(なかあきら)(生田斗真)が、義時から太刀持ちの役を取り上げたのです。義時は三浦に問います。

公暁(こうぎょう)殿はどこに潜(ひそ)んでいる」

「なぜ俺に聞く」

「察(さっ)しはついている」

「では聞こう。それが分かっていながら、お前はなぜ動かぬ」

「思いは同じ。鎌倉殿は私に憤(いきどお)っておられる。もし公暁殿が討ち損(そん)じたなら、私は終わりだ」

 そこへ北条泰時(やすとき)(坂口健太郎)がやってきます。

「父上、どうしてここに。父上はここから動かぬよう。公暁殿は、父上の命も狙っております」

 それを聞いて、泰時は顔をこわばらせます。

 儀式が終わり、鎌倉殿である源実朝(さねとも)(柿澤勇人)たちが石段を下りて行きます。公暁は、イチョウの木に隠れてそれを見ています。

 護衛の詰め所では、泰時が公暁を阻止しに行こうとします。泰時の腕をつかみ、義時がそれを止めるのでした。

 公暁イチョウの陰から刀を抜いて飛び出します。

「覚悟、義時」

 しかし公暁が義時だと思って斬ったのは、源仲章でした。仲章にとどめを刺すと、公暁は実朝に向かいます。実朝は短剣で対抗しようとしますが、やがて思い直し、公暁に向かってうなずくのです。実朝は斬られ、倒れこみます。公暁は、階下に駆け付けた御家人たちに対して、自分の正当性を訴える口上を読み上げようとします。しかしそれは、血に染まってしまいます。義時の号令で、御家人たちは公暁を討ち取ろうと、石段を駆け上がっていきます。

 義時と三浦は、現場に立ちます。仲章の骸(むくろ)を前に、三浦がいいます。

「笑えるな。お前の代(か)わりに死んでくれた」

 北条時房(ときふさ)がいいます。

「兄上は天に守られているのです」

 公暁は逃げ延びます。

 義時は大江広元らと話します。急ぎ跡継(あとつ)ぎを決めなければならない。京に対しては、鎌倉殿は失ったが、動揺はない、と知らせることにします。

 三浦義村は、弟の三浦胤義(たねよし)(岸田タツヤ)に命じます。

「早く若君(公暁)を見つけ出せ。ほかの奴らに先を越されるな」

 胤義が聞きます。

「見つけたら、ここにお連れしてよろしいか」

「見つけ次第(しだい)、殺すんだ。分からんのか。我らが謀反に加担していたことをしゃべられたら、三浦は終わりなんだ」

 北条政子(小池栄子)は外で物音を聞きます。見てみると、公暁がいました。政子は公暁を部屋に招き入れます。

「こんなことをして、鎌倉殿に、本気でなれると思っていたのですか。謀反(むほん)を起こした者に、ついてくる御家人はいません」

「たぶんそうでしょう」

「分かっていたならどうして」

「知らしめたかったのかもしれません。源頼朝(よりとも)を祖父に持ち、源頼家を父に持った、私の名を。公暁。結局、わたしには武士の名はありませんでした」

 公暁は政子に髑髏(どくろ)を見せます。実朝の部屋から持ってきたものです。公暁はいいます。

「これぞ、鎌倉殿の証(あかし)。四代目は私です。それだけは、忘れないでください」

 公暁は立ち上がり、去っていきます。

 義時は三浦義村を問い詰めます。

「どこまで知っていた」

公暁から相談は受けた。しかし断った。信じてもらえそうにないな」

「無理だな」

「では、正直にいう事にする。確かに一時は考えた。公暁を焚きつけて実朝を殺し、てっぺんに上り詰めようと思った。だがやめた。なぜだか教えてやろうか」

「聞かせてもらおうか」

「お前のことを考えたら嫌になったんだよ。今のお前は、力にしがみついて恨みを集め、おびえ切ってる。そんな姿を見ていて、誰が取って代わろうと思うんだ」

「私にはもう、敵はいない。天も味方してくれた。これからは、好きにようにやらせてもらう」

「頼朝(よりとも)気取りか。いっとくが、これで鎌倉はガタガタだ。せいぜい、馬から落ちないように気を付けるんだな」

「私が狙われていたことは、公暁が私を殺そうとしていたことは、知っていたのか。私に、死んでほしかったのではないのか」

公暁がお前も殺そうとしていると知ったら、俺はその場であいつを殺していたよ」

 公暁は、三浦の館に逃げ込んできます。奥の間で飯を食います。京に戻って再起を図ることを語る公暁を、三浦義村は刃(やいば)で貫(つらぬ)くのでした。

 三浦義村は、宿老たちの居並ぶ部屋に、首桶を置きます。奥の屏風の前には、義時が座っています。三浦は、義時に見分を頼みます。義時は確かめ、三浦が公暁を討ち取ったことを宣言するのです。三浦は姿勢を正します。

「この先も三浦一門、鎌倉のために身命(しんめい)を賭(と)して、働く所存にございます」

 義時は立って三浦を見下ろします。

「北条と三浦が手を携(たずさ)えてこその鎌倉。これからもよろしく頼む」

 三浦は義時に深く頭を下げるのでした。

 渡り廊下を歩く義時を、泰時が呼び止めます。

「父上、先ほどは、人目があったのでお話しできませんでした。あの時、なにゆえ私の腕をつかまれたのですか。父上は、鎌倉殿の死を望んでおられた。すべて父上の思い通りになりました。これからは、好きに鎌倉を動かせる。父上はそう、お思いだ。しかし、そうはいきませぬ」

「どういう意味だ」

「私がそれを止めて見せる。あなたの思い通りにはさせない」

「面白い」義時は泰時の着物を直します。「受けて立とう」

 義時は泰時に背を向けて去っていくのでした。

 京では、後鳥羽(ごとば)上皇(じょうこう)(尾上松也)が、実朝の殺されたことを聞いて驚きます。

「つくづく鎌倉とは、忌(い)まわしいところだ」

 と、吐き捨てます。そんなところに親王を行かせる訳にはいかない。今回の話はなかったことにする。慈円僧正(じえんそうじょう)(山寺宏一)が、それでは鎌倉はますます、北条のやりたい放題になる、と語ります。

 そのころ鎌倉では、宿老たちに義時が話しています。

「これを機会に断ってしまえ。そして、別の方を推挙していただく。もっと我らに扱いやすいお方を」

 泰時たちが考え直すように述べます。朝廷の信用を失ってしまう。義時はいいます。

「確かに、こちらから断ればそうなるな。ならば、向こうから断ってくるように仕向けたい」

 義時は、一日も早く親王に来てもらいたいと強く催促することを思いつきます。

 実衣(みい)(宮澤エマ)は息子の阿野時元(森優作)を焚きつけます。

「ここが正念場ですよ。鎌倉で、源氏嫡流(ちゃくりゅう)の血を引くのは、全成(ぜんじょう)様の子である、あなただけなのですよ。必ず、鎌倉殿にして見せます。この母に任せておきなさい」

 義時は政子の前に髑髏(どくろ)を置きます。

公暁が持っておりました」

 政子はいいます。

「もうよい。どこかに丁寧に埋めてしまいなさい」

「かしこまりました」

「小四郎(義時)、わたくしは鎌倉を去ります」

「なりません」

「伊豆へ帰ります」

「できませぬ」

「もうたくさんなんです。なぜ止めるのですか」

「姉上が頼朝様の妻だからです。頼朝様のご威光(いこう)を示すことができるのは、あなただけだ。むしろ立場は、今まで以上に重くなります。今こそ、北条の鎌倉をつくるのです。邪魔する者はもう誰もいない」

「勝手にやりなさい」

「姉上にはとことん付き合ってもらう」

「放っておいて」

「鎌倉の闇を忌(い)み嫌うのは結構。しかし、姉上は今まで何をなされた。お答えになってください。闇を断つために、あなたは何をなされた。頼朝様から学んだのは、私だけではない。我らは一心同体。これまで、そしてこの先も」

 義時は運慶(うんけい)(相島一之)に、仏像を作るよう依頼します。自分に似せた仏像です。

「天下の運慶に、神仏と一体となった己の像をつくらせる。頼朝様が成しえなかったことがしたい」