日本歴史時代作家協会 公式ブログ

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2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『映画に溺れて』第335回 陰獣

第335回 陰獣 平成七年六月(1995)池袋 文芸坐2 昭和初期の雰囲気が漂う東京で、探偵小説家が自ら探偵役となって事件に迫る。原作は江戸川乱歩である。 寒川光一郎は売り出し中の探偵小説家。これがふとしたことで財界の大物、小山田六郎の夫人静子と…

『映画に溺れて』第334回 ヤング≒アダルト

第334回 ヤング≒アダルト 平成二十四年八月(2012)飯田橋 ギンレイホール ヤングアダルトというのは、子供と大人の中間、ティーンエイジャー向きの小説。そのヤングアダルトを執筆している三十七歳の女性メイビス。 かつては田舎町の学園の女王として輝…

『映画に溺れて』第333回 恋愛小説家

第333回 恋愛小説家 平成十年十月(1998)飯田橋 ギンレイホール こちらが挨拶しても、顔をそむけて返事もしない。相手かまわず悪態をついて周囲を不快にさせる。こんな人物とは顔を合わせたくないとだれしも思うだろう。中年で独身のメルヴィンは近隣の…

『映画に溺れて』第332回 ふたりのJ・T・リロイ

第332回 ふたりのJ・T・リロイ 令和元年十二月(2019)六本木 アスミックエース試写室 母親から男娼になることを強要された薄幸の美少年J・T・リロイが書いた実録小説『サラ、神に背いた少年』がベストセラーとなる。 が、覆面作家として、本人は世…

大河ドラマウォッチ「麒麟がくる」 第七回 帰蝶の願い

天文十七年(1548年)。秋。 尾張の古渡城では、織田信秀(高橋克典)が家臣の平手政秀(上杉祥三)と話していました。自分たちは三つの敵に囲まれている。駿河の今川、美濃の斎藤、そして織田彦五郎。彦五郎は同じ織田の一族ながら、嫉妬のためなのか、たびたび横…

2019年極私的・偏愛的ベスト本 単行本編

各紙誌の年末風物詩でもある2019年時代小説ベストテンが出揃った。リストアップされた作品を見ると昨年の充実ぶりが伝わってくる。ここ三年、出版不況が嘘みたいな豊作続きである。 理由の第一は、上位を独占した川越宗一『熱源』(文藝春秋)、大島真寿美『渦…

明治一五一年 第10回

の内側にわたしの水が満ちていくそれは静かなままの下り坂だからが訪れる前に失われていく記憶の奥から呼ばれるいまだ不明のためを留めるいくつかの縊れし者たちもはやそこからは戻れないですかの内側にわたしの血が満ちていくかたことになる足音たちが刻ん…

『映画に溺れて』第331回 ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密

第331回 ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密 令和二年一月(2020)築地 松竹試写室 豪邸に住む高齢の大富豪が毒殺される。莫大な財産をだれが相続するのか。現場に乗り込み、家族ひとりひとりに事情を聴く探偵。みんな怪しい。そこで意外な犯人が。…

『映画に溺れて』第330回 サーチャーズ2.0

第330回 サーチャーズ2.0 平成二十年十一月(2008)新橋 TCC試写室 ハリウッド映画はつまらないから観ない。という人がいる。派手なアクション、内容はスカスカ、似たようなアイディアの大味な作品ばかり。たしかにそういうのもあるが、だからとい…