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大河ドラマウォッチ「麒麟がくる」 第二回 道三の罠(わな)

 天文十六年(1547)。秋。織田信秀(高橋克典)は、二万余りの兵を率い、美濃との国境に陣を敷き、いくさの構えをとりました。
 明智光秀十兵衛(長谷川博己)は、旅から帰ってきたところでした。稲葉山城にて、叔父の明智光安(西村まさ彦)と話します。織田信秀がまたしても攻め込んできたと光安はいいます。
「こたびは苦戦じゃ。敵の数は二万。わが方はわずか四千ほど」
 光秀は美濃の守護代である斎藤道三(この時は利政)(本木雅弘)に旅の報告に訪れます。鉄砲を持ち帰り、医者を連れ帰ってきています。道三は織田信秀のことを述べます。
「いくさは数ではない。そのことを思い知らせてやる」
 光秀は下がろうとします。道三は呼びかけます。
「ところで、そなたに渡した旅の費用だが、あれで足りたか」
「はい、十分でございました」
 と、姿勢を正す光秀。
「すぐにとは言わんが、半分返せ」と、道三は驚くべきことをいい出します。「みなやったわけではないぞ。金がないと申すゆえ、貸したのだ」
 困惑する光秀。道三はいいます。
「返す当てがなければ、いくさで返せ」道三は鉄砲をもてあそびます。「こたびのいくさで侍大将の首を二つとれ。それで帳消しにしてやる」
 道三のもとを去った光秀は、一人の侍に呼び止められます。光秀を道三の妻である小見の方の館へ連れてくるようにと命じられたといいます。誰が命じられたのかは、語ろうとしません。そこで待っていたのは道三の娘、帰蝶(川口春奈)でした。帰蝶は光秀とのしばらくぶりの再会を喜び、母の小見の方のために医者を連れてきたことに礼をいいます。そこへ織田勢進軍の知らせが聞こえてきます。帰蝶のもとを去ろうとする光秀。
「武運を祈る」
 と、帰蝶は光秀に声を掛けます。
 鎧に身を固める光秀。ほかの武将たちも、戦闘態勢を取って織田勢を待ち構えます。
 織田勢の足軽たちが進軍してきて、仕掛けられた落とし穴にはまります。それを矢で射る斎藤軍。
 光秀は手薄なところに回り、敵を押し戻します。侍大将を探します。
 道三は味方が不利だという報告を受けると、兵を退くことを決定します。すべての門を閉じて籠城すると宣言します。
 光秀は退却の命令を知ります。敵の攻撃を引き付けながら下がる光秀。光秀の手勢が入ると、城の門は閉じられます。
 籠城をしながらも攻撃する斎藤軍。投石器で織田勢を攻撃します。梯子が下ろされ、点火された俵が転がされます。火だるまになる織田の兵。
 城に逃れた光秀は不満顔です。道三の息子の斎藤高政(伊藤英明)に文句を言います。美濃の古くからの領主たちも、籠城が気に食わぬようです。
「わしのいうことなど、聞いてくれたためしがない」
 と、いう高政。
「なにゆえだ」
と、たずねる光秀。
「私は正室の子ではない。側(そば)めの子だ」
と、高政は吐き捨てます。
 織田勢は、乱破(らっぱ)=忍び、からの報告で、斎藤軍が油断しきっていることを知ります。織田信秀は、とりあえず兵を引き上げて陣を立て直すことにします。
 しかしこれは道三の策略でした。織田方の乱破が潜り込んでいることを計算に入れ、油断していると見せかけていたのです。道三はいいます。
「今、織田軍はわれらに背を向け、のこのこ歩いておる。この機を逃していつ勝てる」
 斎藤軍は門を開いて織田勢に襲い掛かります。
 斎藤軍は織田信秀のいる場所まで迫ります。信秀の弟、信安は、矢を受けて倒れます。
 光秀は侍大将を探して走り回ります。ついに侍大将を見つける光秀。しかしその首を取ろうとして躊躇します。
 斎藤軍は織田勢を圧倒します。鬨の声を上げる道三。その響きは全軍に伝わっていきます。
 勝利に沸く稲葉山城。京から連れ帰った医者の望月東庵(堺正章)が光秀に話しかけます。
「おめでとうございます。お手柄をお立てになったと聞きました」
「そうですか。それほどおめでたくもない気分です」光秀は沈んだ様子です。「討った侍大将の顔が、叔父上に少し似ていた。急にためらいが。それで、首を落とすのが遅れてしまい。その時、妙なことを思っていたのです。これが武士の本懐かと。武士の誉れかと。こんなことが。しかし、いくさはいくさだ。勝たなければ自分が討たれる。いくさがある限り、勝つしかない」
 光秀は座り込むのでした。
 そのころ道三は美濃守護である土岐頼純を迎えていました。上座に座らせます。土岐は祝いに訪れたと語ります。土岐の妻である帰蝶は夫に抗議します。
「なにゆえ鎧兜を身に着けておいでにならぬのですか。土岐家は源氏の流れをくむ武門。父が苦戦となれば、共に戦う備えも肝要とはお思いになりませんでしたか」
 道三は娘の帰蝶を下がらせます。道三は不思議なことを言い出します。
帰蝶は、みどもが思っておった以上に、守護様のご事情を存じておるようで」
「事情」
 と、土岐は聞き返します。
「こたびのいくさがなにゆえ起きたのか。なにゆえ織田が急変したのか」道三の声は穏やかです。「織田信秀と取り引きなさいましたな。この美濃に攻め込み、みどもを討ち果たした暁には、相当の領地を与えると」
 証拠はありました。死んだ織田信安に土岐が送った手紙が発見されたのです。
 土岐は怒り出します。叔父をそそのかし、父を守護の座から引きずり下ろした、と、道三を責めます。
「そちの父は身分卑しき油売りであった。それをわれらが温情かけて世に出してやったのじゃ。その恩を忘れ、土岐家を二つに裂き、美濃をわがもののごとくふるもうておる、この成り上がりもの」
 土岐は座を立って去ろうします。それを一喝する道三。
「いま一度お座りなさりませ。この城のあるじはみどもでございます。みどもがならぬと申したら、あなた様とて出ていくことはかないませぬぞ」
 土岐は座に戻ります。道三はお茶をたてて土岐にふるまいます。そしてお茶を飲んだ土岐は苦しみ始めるのです。道三はその間、滑稽な唄をうたい続けるのでした。