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大河ドラマウォッチ「麒麟がくる」 第五回 伊平次を探せ

 天文十七年(1548年)、秋。美濃の稲葉山城では、斎藤道三(この時は利政)(本木雅弘)が、明智十兵光秀(長谷川博己)から鉄砲の説明を受けていました。光秀の指導もと、鉄砲を撃ってみてその威力に驚く道三。
「これを将軍家は手に入れておるのか」
 と、うめく道三。
「確かに恐ろしい威力があります」と光秀はいいます。「しかし、いくさで使えるかどうかとなると」
 いぶかしげに光秀を見る道三。光秀は続けます。
「撃つまでに手間がかかりすぎます。一度、撃って次にまた撃つまでに、敵は斬りこんでくる」光秀は懐疑的です。「これをいくさ道具として将軍家が手に入れているのだとは、考えにくうございます」
 道三はたずねます。
「では、本能寺に命じてまでつくらせようとしているのは、なにゆえじゃ」
 明智の館で鉄砲を研究していた光秀は、家臣の藤田伝吾(徳重聡)を呼び寄せて相談します。鉄砲をもっと早く撃つために、分解して中を見てみたい。そして藤田の口から伊平次の名を聞くのです。以前この近くに住んでいた。刀鍛冶になろうとしたが、どこも長続きせず、近江の国友村へ流れていった。そこで京のある筋から頼まれ、鉄砲を修理している、あるいはつくっている。
 光秀は国友村に行ってみることにします。
 その頃、医者の望月東庵(堺正章)の助手である駒(門脇麦)が、明智の館を訪ねようとしていました。東庵が尾張から帰ってきたこともあり、京に戻ることにしたのです。そのあいさつのため、駒は光秀に会いに来たのでした。しかし明智の館に到着してみると、光秀は国友村に行ってしまっていません。がっかりして館をあとにする駒。一緒についてきた菊丸(岡村隆史)に
「もう会えないかもしれないのに」
 と、いわれてしまいます。
 国友村に着いた光秀は、鍛冶師に、鉄砲について口外してはならぬとの沙汰を受けているといわれます。その沙汰はどこから、とたずねる光秀。将軍家から、と鍛冶師は答えます。光秀は伊平次に会わせて欲しいと頼みます。その願いも断る鍛冶師。帰ろうとする光秀に、鍛冶師の一人が声をかけてきます。伊平次の居場所を教えるというのです。光秀は金を払い、伊平次が京の本能寺にいることを聞き出します。
 光秀は美濃に帰り、道三から京に行く許可を取り付けます。
 京は度重なる戦火に街を焼かれ、公家や僧侶、将軍さえも逃げ出す都と化していました。近江にいた将軍足利義輝を、京に戻したのは細川晴元(国広富之)という有力大名でした。しかしその晴元も家臣たちの内部抗争に手を焼いていました。とりわけ強力な軍事力を持った三好長慶(山路和宏)と、長慶を支える松永久秀(吉田鋼太郎)は、すでに主君晴元をおびやかす存在になっていました。
 光秀は京に来て、本能寺を前にしていました。しかし本能寺の中は侍だらけでは入れないということでした。足利将軍が来ているらしいのです。光秀は背中に背負った鉄砲を怪しまれ、ある侍に刀を向けられます。刀を抜いて応戦する光秀。そこへ斬り合いをやめるようにと声がかけられます。馬上本能寺を出てきた、将軍足利義輝(向井理)でした。
 光秀が将軍を見送ると、親しく声をかけてくる者がいます。堺で会っていた、将軍奉公衆の三淵藤英(谷原章介)でした。光秀に斬りかけてきたのは、同じく将軍奉公衆で三淵の弟である細川藤孝(眞島秀和)でした。三淵は光秀の持っている鉄砲は、堺で松永久秀に頼んで手に入れたのだろうと言い当てます。三淵は松永に会いに行こうとしているところでした。一緒に行かないかと光秀を誘う三淵。光秀は伊平次に会いに、本能寺にやってきたことを話します。実は三淵も伊平次の行方を捜していたのです。どこへ行ったのか不明でした。
 三淵と光秀は、松永久秀の陣所にやってきます。侍たちは殺気立っています。家臣たちを下がらせて三淵に会う松永。光秀もいることに松永は気づきます。光秀も伊平次を探していると、松永に告げる三淵。松永は斎藤道三もいくさで鉄砲を使おうとしているのだと合点します。松永はいいます。
「わしも、この三淵様も、できるだけ多くの鉄砲をそろえて、敵に備えようと考えておるのじゃ。そこで腕利きの伊平次につくらせようとおもったのだが、その伊平次がつかまらんのだ」
 三淵は、松永一派と、互いに譲り合い、共に生きていく道を見つけようとやってきたのでした。しかし話し合いはうまくいかず、三淵はまた出直すことにします。
 光秀も三淵とともに帰ろうとしますが、松永に呼び止められます。
 光秀は松永と話す中、考えていた疑問を投げかけます。
「鉄砲がさほど大事でしょうか。これをこのままいくさで使えるとは思えませぬし、なにゆえ公方様(将軍)が本能寺を通してまで鉄砲を集めようとしておられるのか、腑に落ちませぬ」
 それを聞いて松永は自分の所有する鉄砲を光秀に向けるのです。
「どうだ、動けるか」と松永は叫びます。「銃口を向けるだけで相手の動きを封じることができる。弾が当たるかどうかではない」
 鉄砲を下げ、松永はさらにいいます。
「鉄砲の怖さをお互い知っていれば、気楽に攻め込むことはできん。いくさのありようは変わるぞ。わしならば、戦う前にこう考える。敵は鉄砲を何挺持っている。こちらの三倍持っているのか。ならばいくさはやめておこう。いくさは減るぞ」
 松永は光秀に伊平次に会いに行くことを提案します。実は松永は、伊平次の居所を知っていたのです。
 松永は光秀を連れて遊郭にやってきます。松永はこのようなところに慣れているようなのです。しどろもどろとなる光秀。ついに光秀と松永は伊平次と対面します。伊平次は松永にいいます。
「何度来られても、できないものはできない」
 松永は伊平次の鉄砲をほめます。渡来のものに勝るとも劣らないできばえだ。しかも値段が安い。伊平次はできない理由を話します。松永に二十挺つくったとする、すると細川晴元は三十挺つくれといってくるだろう。それを知った将軍は五十挺つくれと命じてくる。そのような政治のゴタゴタに巻き込まれたくないのだ。光秀は思い出します。
「あの伊平次だな」
 光秀は暴れ者の伊平次が井戸に落ちたところを、縄を投げて助けていたのです。伊平次もそのことを思い出します。伊平次は光秀の持っていた鉄砲に気がつきます。光秀は伊平次にそれを分解してくれるように頼みます。伊平次はそれを請け合います。
 道具を取りに行くために着替えようと部屋を出る伊平次。松永と光秀は階段に出ます。光秀は謝ります。
「私の都合を先にいってしまい、申し訳ありませぬ」
 松永はむしろ機嫌がいいようです。
「気にするな。よいよい。よいぞ、おぬしたちにそういうえにしがあったとはな。これは天が与えた僥倖じゃ。あの様子では、おぬしが頼めば鉄砲二十挺、用意するのではないか」
 松永は光秀に強引に頼み込んで去って行くのでした。
 伊平次と通りを歩く光秀。その後ろ姿を見た者がいます。東庵に連れられた駒でした。東庵にたずねられ、駒がいいます。
「あのお一人が、十兵衛(光秀)様によく似ていらっしゃったので」
「ここは京だぞ」と、駒は東庵にたしなめられます。「十兵衛様がいるわけがあるまい」
 光秀も何かを感じて後ろを振り返るのです。