日本歴史時代作家協会 公式ブログ

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大河ドラマウォッチ「麒麟がくる」 第三十二回 反撃の二百挺

 元亀元年(1570年)四月。織田信長染谷将太)率いる軍勢は、越前、金ケ崎から京へ逃げ帰りました。信長の敗北でした。

 二条城の将軍足利義昭滝藤賢一)のもとへ、明智光秀十兵衛(長谷川博己)は呼び出されます。信長に会う前に話を聞いておきたいということでした。信長の敗北に落胆する義昭に、光秀は言い切ります。

「引き分けでございます」

 光秀はにこやかな様子で話します。なぜ戦場に義昭がいないのかと思った。義昭がいてくれたら、浅井も裏切らなかったろう。朝倉もひるんだだろう。

「二年前、公方様(義輝)と信長様は、世を平らかに治めるため、上洛なさいました。我らは敵が誰であれ、心を一つにして戦い、良き世をつくりたい。その一心でいくさに参ったのです。しかしそこに、公方様のお姿がない。都で、高みの見物をなされている」光秀は表情を引き締めます。「これは、誠に恐れ多きお願いと存じまするが、次のいくさには、ぜひ、ぜひ、公方様にもお出ましいただきとうございます。公方様の御旗が立てば、幾万の兵の力の力を得たも同然。そのことをよく、よく、胸にお刻みいただきとうござりまする」

 光秀が京にある館に戻ってみると、家族が越してきていました。喜ぶ光秀。光秀は妻の熙子(木村文乃)にいうのです。

「熙子。これからはここが我が家ぞ。わしはここでそなたたちを守ってみせる。都を守り、天下を鎮め、ここを守る」

 光秀は木下藤吉郎佐々木蔵之介)と共に、堺にやってきました。今井宗久陣内孝則)に会い、鉄砲の買い付けを行おうとしていたのでした。

 信長の求める鉄砲の数は三百。しかし今井宗久に断られてしまいます。その日の朝、ある人に、二百五十挺の鉄砲を売ることを約束してしまったというのです。その人物の名を宗久は商いの秘密だと教えてくれません。

 光秀と藤吉郎の泊まる宿に、一枚の紙が届けられます。二人は宗久に茶会に誘われていました。その参加者の名前をあらかじめ知らせてくれたのです。商売上の秘密は洩らせないが、茶会に集まる顔ぶれなら教えられる、というわけです。鉄砲を買いそうなのは、筒井順慶(駿河太郎)だと光秀は目星をつけます。厄介な相手だと、光秀は藤吉郎に話します。筒井順慶松永久秀と大和の国を争っている男でした。

 顕本寺にて茶会が開かれます。

「また皆様お揃いになりませぬので、この部屋にて、しばしお待ちくださりませ」

 と、今井宗久筒井順慶を、光秀と藤吉郎のいる所に案内するのです。順慶は僧のいでたちをした人物でした。そこに順慶に促されて駒(門脇麦)が入ってくるのです。光秀は交渉を開始します。難航する話し合いに、駒が助け舟を出してくれるのです。

「そのかわり」

 と順啓は条件を持ち出します。駒に将軍義昭に引き合わせてもらいたいというのです。光秀には、信長に会わせてくれるようにと求めます。光秀はこれを飲み、鉄砲二百挺の入手に成功するのでした。

 金ヶ崎の敗北からおよそ二か月後、信長は徳川家康(風間俊介)と共に、近江に出撃し、朝倉、浅井の両軍と戦いました。姉川の戦いです。兵力に勝る、織田、徳川両軍は、敵を切り崩し、朝倉、浅井軍は、おのおのの城に逃げ帰りました。勝ち鬨(かちどき)を上げる信長。

 信長のいくさは続きます。戦場になんと足利義昭がやってくるのです。信長がいいます。

「此度(こたび)は、かたじけなくも、公方様の参陣を仰ぎ、一同勇み立ち、必勝の思いを新たにいたしております」

 京では駒が、望月東庵(堺正章)が庭に銭を埋めようとしているのを見つけます。また家を焼かれた時の用心だというのです。織田信長が摂津で苦戦をしていると、東庵は駒に告げます。駒は信じられません。足利義昭も参戦している。負けるわけはない。東庵は説明します。摂津には一向宗といって、教理の教えに従って戦えば、極楽に行けるという者たちの総本山、本願寺がある。朝倉も京へ向かって出陣したらしい。

 実際に信長は各勢力に包囲された形になり、窮地に陥っていました。

 信長は光秀にいいます。なぜ比叡山の坊主どもは朝倉たちをかくまうのだ。浅井もどうしてこのいくさに関わろうとする。光秀は答えます。

「信長様は、比叡山から多くを奪い、朝倉、浅井は、多くを与えるからだと」

 何をだ、と信長は光秀に聞きます。

「つまるところ、金(かね)ではありませぬか」

 そのころ比叡山延暦寺に、朝倉義景がやってきていました。三枚の金貨を差し出します。

「私に織田信長を討つ力をお貸し下れば、必ずや天下を平定し、畿内のお好みの地を、領地として差し上げると。この比叡山のすべての屋根を、黄金(こがね)色に葺き替えてごらんに入れまする」