大河ドラマウォッチ「鎌倉殿の13人」 第12回 亀の前事件
義時(小栗旬)は八重(新垣結衣)に、八重の父である伊東祐親と兄である伊東祐清が死んだことを伝えます。そして義時が新しい領主となった、もとの伊東の領地、江間に来てくれるように八重に頼みます。八重は承諾するのでした。
義時の妹である実衣(宮澤エマ)は、頼朝(大泉洋)の弟の阿野全成(新納慎也)と結婚することになります。
頼朝の乳母(めのと)である比企尼(草笛光子)が、比企能員(佐藤二朗)に連れられて、頼朝のもとにやって来ました。
頼朝は御家人たちに、都からやってきた大江広元などを紹介します。頼朝は政子との間に生まれてくる子の乳母に比企能員を指名します。安産を祈願するために、鶴岡八幡宮に馬を奉納することになります。その馬引きの役に、義経(菅田将暉)と、畠山重忠(中川大志)が選ばれるのです。義経は気に入りません。
「そんなことをするために、私はここにいるのではありません」
その義経の言葉を聞いて、頼朝も怒ってしまいます。
政子と義時のいる場所で、義経はこぼします。
「平家と戦えぬ私は、ただの役立たず」
政子が頼朝についていいます。
「あの方は、お身内を失い、一人で生きてこられたの。血を分けた兄弟ほど、心強い味方はおりませんよ」政子は義経に近づきます。「必ず、鎌倉殿のお役にたつ時が来ます。九郎殿、どうか」
義経がいいます。
「御台所(みだいどころ)(政子)は、おのこ、か、おなご、どちらがいいのです」
政子が答えます。
「丈夫ならどちらでもいいわ」
義経は政子の腹を触ります。
「いい子が、生まれますように」
出産が近づいた政子は、鎌倉にある比企の館へ移ることになります。
寿永元年(1182)八月十二日。政子は男子を出産します。万寿と名づけられたその子が、後の二代将軍、源頼家でした。
義時はある館に案内されます。そこは頼朝が亀(江口のりこ)と会うための隠れ家でした。頼朝がうそぶきます。
「お前もいずれ分かる。妻というものは、子ができたら、夫のことなどそっちのけ。政子は、比企の所に行ったままじゃ。さびしいぞ」
江間の館に行くと、義時は八重から、鎌倉の御所に戻りたいといわれます。頼朝の側にいたいというのです。義時はいいます。
「うすうす気づいているとは思いますが」義時は八重に近づきます。「あなたの父上のお命を奪うよう命じたのは、鎌倉殿です。じかに聞いたわけではありませんが、間違いない。あの方は、恐ろしい人です」
八重が口を開きます。
「それを私に伝えてどうしたいのですか。私が何といったら、あなたは喜ぶのですか。頼朝は許さぬ。そんなこというと、あなたは思ったのですか。分かっていました、それくらいのこと。あのお方は、千鶴のかたきを取って下さったのです。ありがたいことではないですか。違いますか。答えなさい、小四郎」
義時は下がり、頭を下げます。
「余計なことを申しました」
万寿の息が一時止まったと、実衣が全成に伝えます。全成はいいます。
「親の不徳が、子に禍(わざわい)をもたらす、といってね。決して誰にもいってはいけないよ。兄上には、御台所とは別に、想い人がおられる」
そのことを時政の妻である、りく(宮沢りえ)が耳にしてしまうのです。りく、は政子にいいます。
「あなたも気が気ではありませんね。あれやこれやと」
あくまで噂だと断りつつ、りく、は頼朝と亀のことを政子に伝えてしまうのです。
政子は義時を呼び出して怒ります。
「許せない。みんな知っていたんですね。ひどすぎます」
りく、がいいます。
「都では、高貴なお方が、そばめを持つことは良くあることです」
「ここは都ではありません」
「あなたからお心が離れた訳ではないのですから」
「坂東のおなごをみくびらないで下さい」
政子は義時に、相手は誰なのかと問い詰めます。義時はいってしまうのです。
義時が去ると、りく、は政子に知恵を授けます。
「こうしましょう。鎌倉殿が都をまねて、そばめをつくったのなら、こちらは後妻(うわなり)打ちで仕返しするのです。都にはそういう習わしがあるんです。前妻はね、後妻の家を打ち壊してもかまわないの」
「打ち壊すの」
と、政子は聞きます。
「形だけね。ここは鎌倉殿に、肝を冷やしていただきましょう」
「面白くなってきました。そんなことをしたら、鎌倉殿が黙っているわけがありません」
「こじれるで」
と、牧は楽しそうにいいます。
「いい薬です。御台所にとっても、鎌倉殿にとっても」
義時は三浦好村(山本耕史)と共に、亀を館から連れ出します。
同時に義時は、義経に館の見張りに立ってくれるように頼みます。
夜、牧が亀の館を壊しに来ます。ちょっと壊すだけのつもりだった牧でしたが、館を守るはずだった義経が弁慶などに命じて派手にやり始めます。
頼朝は亀の館の焼け跡を見て、呆然となります。義時が頼朝に、亀の無事を伝えます。梶原景時(中村獅童)が、一部始終を見ていた者がいるといいます。頼朝は想わず声をあげます。
「恐ろしすぎる。ここまでするか」
頼朝は調べを行います。りくの兄の牧が怪しいと思い当たります。梶原がいうのです。見ていた者によると、火をつけたのは義経であったと。
詮議の席に、牧と義経が呼び出されます。二人はやったことを認めます。頼朝は義経にいいます。
「九郎。政子のためにやったのであろうな。これを許せばほかの御家人に示しが付かん。謹慎を命じる」
牧は罰として、髻(もとどり)を切られます。
りくは怒って、頼朝に抗議をしに行きます。
「あまりといえばあまりでございます。すべては鎌倉殿の、おなご癖の悪さが引き起こしたことではありませぬか。八つ当たりされた兄が不憫でなりません」
頼朝がいいます。
「源氏の棟梁が、そばめの一人や二人、持ったところで文句をいわれる筋合いはない。都育ちのお前なら分かるであろうが」
「なんと、よう申されますね。夫に、そばめがいて、それを心より許せるおなごなど、都にだっておりませぬ。そばめが当たり前と、開き直られてはたまりません」
「下がれ」
「下がりません。夫がそんな物いいとは、懸命に御台たろうと励んでいる政子が哀れでなりませぬ」
そこへ政子がやってくるのです。りくにいいます。
「母上、今のお言葉、かたじけのうございます」政子は頼朝に対して座ります。「肝心なのは夫の裏切り」
りくもいいます。
「とがめるべきは、夫のふしだら」
政子が言葉を重ねます。
「我が子を放って、そばめと会っていたなんて、許せることではございませぬ」
りくが頼朝に迫ります。
「今すぐ御台に頭をお下げ下さい」
政子もいいます。
「さあ」
頼朝はやっと声を出します。
「黙れ。わしに指図するとはもってのほか。源頼朝を愚弄すると、たとえお前たちでも容赦はせぬぞ。身の程をわきまえよ。下がれ」
その時まで黙っていた北条時政(坂東彌十郎)が立ち上がるのです。
「源頼朝が何だってんだ。わしの大事な身内に、よくもそんな口を叩いてくれたな。たとえ鎌倉殿でも許せねえ」
時政はつぶやくようにいいます。
「いっちまった」時政は笑い声を上げます。「どうやら、ここまでのようだ。小四郎(義時)、わしゃ降りた。伊豆へ帰る。やっぱり鎌倉の暮らしは窮屈で性に合わん。伊豆へ帰って米を作っておる方がいい。小四郎、後は任せた」
義時は上総広常(佐藤浩市)の館を訪ねていました。思わずこぼします。
「何もかもが嫌になりました。私も父上のように、すべてを放り出して、伊豆に帰りたい」
そこに亀が顔を出します。
「まだお休みにならないの。お忙しいこと」
義時は、亀を上総に預かってもらっていたのです。
「いつまで預かってりゃいいんだよ」上総は迷惑顔です。「俺に色目使ってきやがった。ああいう女は好かねえ」