日本歴史時代作家協会 公式ブログ

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大河ドラマウォッチ「鎌倉殿の13人」 第23回 狩りと獲物

 巻狩りの仕切りを任された、父の北条時政坂東彌十郎)のもとを、義時(小栗旬)が訪ねます。

「父上、私に隠していることはございませんか」

 と、外を見ながら義時は聞きます。

「何の話だ」

 と、時政は応じます。義時は声をひそめます。

「曽我の兄弟。梶原の平三殿が動いております」

「ありゃただの敵(かたき)討ちだ」

「やはり、ご存じないのですね。敵討ちというのは見せかけ。あの者たちは、鎌倉殿への謀反(むほん)をたくらんでおります」

「何だと」

「父上は、利用されたのです」

 巻き狩りに頼朝親子が出発しようとしていました。政子たちにあいさつします。

「万寿(まんじゅ)(金子大地)の初陣(ういじん)じゃ」と、頼朝(大泉洋)は言葉に力を込めます。「みずから獲物を討ち取り、皆々(みなみな)の前で、山の神に捧げる。万寿こそが、次なる鎌倉殿と知らしめるのだ」

 万寿は頼朝にうなずいて見せます。

 巻狩りとは、猪や鹿を仕留める、大規模な狩りのことです。何日もかけて行われる、大軍事演習でもあります。この日、坂東各地から、御家人が義朝のもとに集結しました。

 しかし万寿は思うように獲物を仕留められないのです。義時の息子の金剛(坂口健太郎)は見事な鹿を仕留めます。

 夜、皆が酒を酌み交わす中、比企能員佐藤二朗)が姪(めい)の比奈(堀田真由)を連れてやって来ます。頼朝の相手をさせます。ところが比奈は、一人、作業をする義時のもとにやって来るのです。比奈と義時は、狩りの下見に夜道に出ます。そこに猪が現れ、二人は逃げ出すのでした。

 翌日、弓をうまく扱えない万寿は、金剛にやってみるよう促します。金剛は見事、鳥を射落とします。 

 比企能員安達盛長(野添義弘)は、万寿のために仕掛けを施します。動かない、作り物の鹿を万寿に射させ、それを功績にさせようとします。仕掛けが成功すると、頼朝は叫びます。

「山の神もお認めになられた。万寿こそ我が跡継ぎにふさわしい」

 万寿は金剛と話します。万寿は仕掛けのことを気付いていました。

「私はいつか、弓の達人になってみせる。必ず自分の力で、鹿を仕留めてみせる。必ず」

 そう語る万寿に

「楽しみにしています」

 と、金剛は応じるのでした。

 事件が起こったのは、五月二十八日の夜のことでした。武装した曽我兄弟が動き始めます。

 そんなことを知らない頼朝は、比奈のもとに向かおうとしていました。なりません、と珍しく安達盛長が諫(いさ)めます。しかし頼朝は工藤祐経坪倉由幸)を身代わりに寝かせ、こっそりと出かけていくのでした。

 頼朝は比奈のもとにやって来ます。しかしそこには比奈と共に、義時もいたのです。頼朝は大声を出します。

「わしは征夷大将軍じゃ。側妻(そばめ)を持つのがそんなにいけないことか」

 義時は引きません

「あなたというお人が分かりません。比奈殿と私を結びつけようとされたのは、ご自身ではないですか」

「政子じゃ。あれが勝手にいいだしたこと。それにお前、比奈にはその気はないんだろう」

「そのようなことは申しておりません。良い方を、お引き合わせ下さったと思っております」

「あっそう。お前とおなごを取り合うのは、もうごめんじゃ。帰る」

 頼朝は立ち去ります。それを追おうとする義時を、比奈が引き止めます。

「お気持ち嬉しゅうございます」

「あれは方便」

 という義時を比奈は放しません。

「いいえ、違うと思います」

 義時は完全に頼朝を見失います。

 曾我兄弟は、北条から借りた兵と共に、頼朝の宿舎に向かおうとしていました。そこは畠山重忠中川大志)が警護をしています。曽我兄弟の一団と、畠山の一団が、激突します。曽我五郎(田中俊介)は乱戦を抜け出し、寝ている頼朝と思われる人物を斬りつけます。

 巻狩りを行う坂東武者たちの間に、頼朝が死んだ、との話が伝わります。時政は義時に

「世の中ひっくり返るぞ」

 と、いいます。

 しかしこんな中、万寿は落ち着いているのです。的確な命令を出し、跡取りとしての貫禄を示します。

 義時は寝間着を着た遺体を確認します。そこへ頼朝が現れるのです。

「これは、何事じゃ」

 義時は安堵のため息をつきます。

 混乱の中、襲撃の第一報が、鎌倉にもたらされます。比企能員は万寿のまで死んだと聞き、頼朝の弟とである蒲殿(源範頼)(迫田孝也)を鎌倉殿にしようと画策します。

 時政と義時の親子は話し合います。このまま曽我五郎を殺せば、頼朝が自分への不満の口封じをしたと噂が立つ。兵を貸した時政も罪に問われかねない。

 義時は頼朝に、謀反ではなかったと話します。

「鎌倉殿の身代わりとなった工藤殿は、曾我兄弟とは因縁深き間柄。かつて兄弟の父親を殺(あや)めたのが工藤殿」義時は頼朝に近づきます。「これは、敵討ちを装った謀反ではなく、謀反を装った敵討ちにございます」

 頼朝は納得します。

「確かに。わしの治めるこの坂東で、謀反など起こるはずもない」

 縛られた曽我五郎の前に、頼朝が姿を現します。梶原景時中村獅童)が語ります。父の敵討ちはまことにあっぱれであった。しかし巻狩りの場で、騒ぎを起こしたことは、許すことはできない。よって斬首とする。頼朝が五郎に声をかけます。

「曽我五郎。おぬしが兄弟の討ち入り、見事であった。まれなる美談として、末代までも語り継ごう」

 五郎は立ち去る頼朝に叫びます。

「違う。俺が狙ったのは、頼朝だ。祖父、伊東祐親を死なせたのも、坂東をおかしくしたのも、頼朝なんだ。聞いてくれ」

 五郎は連れ去られていきます。

 頼朝は鎌倉に戻ることにします。義時にいいます。

「時政は、曽我五郎の烏帽子親だと聞いた。此度(こたび)の一件、北条は関わりないのだな。信じて良いな」

 間を開けて義時は答えます。

「もちろんでございます」

「よかろう。小四郎。二度とわしの側を離れるな。わしのためでもあるが、お前のためでもある」

「かしこまりました」義時は原野に目を向けます。「やはり、鎌倉殿は天に守られております」

 頼朝は顔をしかめます。

「そうだろうか。確かに、此度(こたび)も命は助かった。だかこれまでとは違った。今までははっきりと、天の導きを感じた。声が聞こえた。だが昨日(きのう)は、何も聞こえなかった。たまたま助かっただけじゃ。次はもう無い。小四郎。わしがなすべき事は、もうこの世に残っていないのか」

 頼朝は低い声で笑うのでした。

 夜、義時は、比奈のもとを訪ねます。鎌倉へ帰ったら、自分の世話は無用だと言い放ちます。もう少し側(そば)にいさせて欲しいという比奈に、義時は話します。

「私は、あなたが思っているよりも、ずっと汚い。一族を守るためなら、手立てを選ばぬ男です。一緒にいても幸せにはなれぬ。そして何より、私は、死んだ妻のことを忘れることができない。申し訳ない」

 しかし比奈は義時を呼び止めるのです。

「私の方を向いてくれとはいいません。私が小四郎殿を見ていれば、それでいいのです」

 義時は困惑しながらも、比奈に振り返るのでした。

 しかし事はこれで終わりではありませんでした。大江広元栗原英雄)が頼朝に伝えます。蒲殿が、次の鎌倉殿になったかのような振る舞いだった。

「信じられん」と声を出す頼朝でしたが、次第に激昂してきます。「範頼め」