日本歴史時代作家協会 公式ブログ

歴史時代小説を書く作家、時代物イラストレーター、時代物記事を書くライター、研究者などが集う会です。Welcome to Japan Historical Writers' Association! Don't hesitate to contact us!

2020-01-01から1年間の記事一覧

『映画に溺れて』第386回 フランケンシュタイン(1931)

第386回 フランケンシュタイン(1931) 平成三年九月(1991)大泉 練馬区立勤労福祉会館 フランケンシュタインを描いた映画はたくさんあるが、やはりボリス・カーロフ主演の『フランケンシュタイン』が一番有名であろう。日本での初公開は昭和七年で…

書評『大富豪同心 贋小判に流れ星』

書名『大富豪同心 贋小判に流れ星』著者 幡 大介発売 双葉社発行年月日 2020年8月10日 定価 ¥650E 大富豪同心(25)-贋の小判に流れ星 (双葉文庫) 作者:幡 大介 発売日: 2020/08/07 メディア: 文庫 「大富豪同心」シリーズはドラマ化され、2019年5月よ…

『映画に溺れて』第385回 ゴッド・アンド・モンスター

第385回 ゴッド・アンド・モンスター 平成十四年二月(2002)池袋 新文芸坐 一九三一年のユニバーサル映画『フランケンシュタイン』はボリス・カーロフ演じる怪物で有名だが、それを監督したのが英国生まれのジェームズ・ホエール。引退後、一九五七年五…

『映画に溺れて』第384回 グッドライアー 偽りのゲーム

第384回 グッドライアー 偽りのゲーム 令和二年二月(2020)日比谷 TOHOシネマズ日比谷 ヘレン・ミレンとイアン・マッケラン、どちらもイギリスのシェイクスピア俳優にしてベテランの名優、映画に主演もすれば脇役も多い。 デイムの称号のあるヘレン…

『幽霊画展』開催のお知らせ

『幽霊画展』開催のお知らせ 落語中興の祖・三遊亭圓朝ゆかりの「幽霊画展」 全生庵で開催中(8/1~8/31) http://www.theway.jp/zen/event/yureiga2020.pdf 江戸末期から明治にかけて活躍し、「牡丹燈籠」「真景累ケ淵」「死神」など、多くの名作落語を創作し…

終戦の日に寄せて(大谷羊太郎)

終戦の日に寄せて、少年時代の空襲の記憶を語ります kakuyomu.jp

書評『京都に女王と呼ばれた作家がいた 山村美紗とふたりの男』

書 名 『京都に女王と呼ばれた作家がいた 山村美紗とふたりの男』著 者 花房観音発行所 西日本新聞社発行年月日 2020年7月26日定 価 ¥1500E 京都に女王と呼ばれた作家がいた 山村美紗とふたりの男 作者:花房 観音 発売日: 2020/07/14 メディア:…

『映画に溺れて:』第383回 時をかける少女(2006)

第383回 時をかける少女(2006) 平成二十二年四月(2010)高田馬場 早稲田松竹 二〇一〇年版の『時をかける少女』を観た一か月後、たまたま早稲田松竹で細田守監督特集があり、アニメ版『時をかける少女』が上映された。 現代の東京、主人公は高校…

『映画に溺れて』第382回 時をかける少女(2010)

第382回 時をかける少女(2010) 平成二十二年三月(2010)新宿 新宿ピカデリー 『時をかける少女』はTVや映画で何度も映像化され、アニメにもなり、演劇になり、コミックにもなっている。ひとつの作品が様々な形でこれだけ繰り返されるのも珍しい…

明治一五一年 第15回

明治一五一年 第15回 気がつけば傍らにいる誰かのうすれかけた小さな影がまだ違う記憶の水際に漂う呟きを掌に過去も今の時間だから包み込むならば消えた人たちの静かな太ももが不意にかたわらを通り積み重なる一五一年の過去も今の時間だからの時の間の埋も…

『映画に溺れて』第381回 時をかける少女(1983)

第381回 時をかける少女(1983) 令和二年七月(2020)池袋 新文芸坐 筒井康隆の『時をかける少女』を最初に観たのは一九七二年のNHKドラマ『タイムトラベラー』だった。主役の芳山和子を演じた島田淳子はその後芸名を浅野真弓に変更し『柳生一族…

【速報】第9回 日本歴史時代作家協会賞

第9回 日本歴史時代作家協会賞 2020年7月30日公表 新人賞 坂上 泉『へぼ侍』 文藝春秋2019[候補作] 加納則章 『明治零年 サムライたちの天命』H&I(エイチアンドアイ)2020年4月 杉山大二郎『嵐を呼ぶ男!』 徳間書店2019年11月 佐藤 雫 『言の葉は、残り…

『映画に溺れて』第380回 着ながし奉行

第380回 着ながし奉行 平成十四年二月(2002)阿佐ヶ谷 ラピュタ阿佐ヶ谷 市川崑監督の『どら平太』が公開されたあとのこと、ラピュタ阿佐ヶ谷の岡本喜八監督特集で珍しいTV作品の上映があった。山本周五郎原作『町奉行日記』のTV版、フジテレビで一…

『映画に溺れて』第379回 マンハッタン無宿

第379回 マンハッタン無宿 平成二十一年八月(2009)京橋 フィルムセンター マカロニウエスタンで売れたクリント・イーストウッドが現代都市を舞台に活躍する刑事もの、といえば『ダーティハリー』だが、実はその前にもう一本あったのだ。ただし、現代劇…

大谷羊太郎さんの小説更新

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『映画に溺れて』第378回 ダーティハリー

第378回 ダーティハリー 昭和四十八年四月(1973)大阪 堂島 大毎地下 クリント・イーストウッドを映画館で最初に観たのが『続・夕陽のガンマン』で、私は中学生だった。そして『ダーティハリー』が公開され、話題になったのが高校時代の終わり頃。マカ…

『映画に溺れて』第377回 リチャード・ジュエル

第377回 リチャード・ジュエル 令和二年七月(2020)飯田橋 ギンレイホール クリント・イーストウッドは俳優としても大好きだが、映画監督としても名作、佳作をたくさん撮っている。『リチャード・ジュエル』は一九九六年のアメリカ、アトランタオリンピ…

『映画に溺れて』第376回 黒い司法 0%からの奇跡

第376回 黒い司法 0%からの奇跡 令和二年一月(2020)神谷町 ワーナーブラザース試写室 アメリカの人種問題は根が深い。奴隷として使役させられていた黒人たちは、南北戦争後、解放はされたが、依然として差別は続いた。黒人は奴隷時代とさほど変わらぬ…

『映画に溺れて』第375回 魔法使いの弟子

第375回 魔法使いの弟子 平成二十二年八月(2010)新宿歌舞伎町 ミラノ3 自社アニメーションの名作を次々と実写化しているディズニー。そんな中で異色なのが『ファンタジア』の一編『魔法使いの弟子』の実写版。オリジナルはポール・デュカスの曲に乗せ…

『映画に溺れて』第374回 川の底からこんにちは

第374回 川の底からこんにちは 平成二十二年三月(2010)東銀座 シネマート試写室 私はコメディがけっこう好きなのだが、最近は声を出して笑えるようなコメディが少ない。不況の際には喜劇が流行すると言われている。新型コロナウィルスによる不況、なん…

『映画に溺れて』第373回 セッション

第373回 セッション 令和二年六月(2020)新所沢 レッツシネパーク コロナ禍で試写にも映画館にも行かなかったので、三か月ぶりの映画鑑賞である。やはり映画館で観る映画は感動が違う。 今回は以前に見逃していた『セッション』を観る。映画館は緊急事…

明治一五一年 第14回

悲鳴は失われた形になるだろうわだかまる意識のかたちは水を剥ぐ骨髄の中心まで柔らかく穿つ悲鳴は失われた形になるだろう死者の言葉はいつまでも終わらぬ明治元年の唇の多くの掌もまた戻る悲鳴は失われた形になるだろう遠くに吊るされる人影の傾きを開く見…

第九回歴史時代作家協会賞 候補作について

第九回歴史時代作家協会賞の候補作を発表致します。 [候補作] ●新人賞(デビューから3年以内の作家で、2019年6月から2020年5月までの作品が対象) 加納則章 『明治零年 サムライたちの天命』H&I(エイチアンドアイ)2020年4月 明治零年 サムライたちの天命…

書評『信長、天が誅する』『信長、天を堕とす』

書名『信長、天が誅する』著者名 天野純希 発売 幻冬舎発行年月日 2019年11月25日定価 本体1600円(税別) 信長、天が誅する (幻冬舎単行本) 作者:天野純希 発売日: 2019/11/26 メディア: Kindle版 書名『信長、天を堕とす』著者名 木下昌輝発売…

書評『吉原美味草紙 おせっかいの長芋きんとん』

書名『吉原美味草紙 おせっかいの長芋きんとん』著者名 出水千春発売 早川書房発行年月日 2020年4月15日定価 ¥680E 吉原美味草紙 おせっかいの長芋きんとん (ハヤカワ文庫JA) 作者:出水 千春 発売日: 2020/04/10 メディア: Kindle版 主人公の、料理人を目…

大河ドラマウォッチ「麒麟がくる」 第二十一回 決戦!桶狭間

永禄三年(1560年)。駿河の今川義元(片岡愛之助)が尾張に迫ってきました。大高城、鳴海城はすでに今川方の手に落ちていましたが、ついに義元みずから大軍を率いて、沓掛(くつかけ)城まで進軍してきたのでした。 今川義元は大高城に入っている徳川家康(このと…

明治一五一年 第13回

失われた足を失われた眼が覗いている静まり返った光の内側を過っていく人があり呼ばれる掌のくぼみはいまだに終わらない繰り返される末後の風景だから人知れずに躓く明治の四十五年の死んだ人の影たちを踏みそばからまた始まるいくつかの記憶をちがう記憶に…

大河ドラマウォッチ「麒麟がくる」 第二十回 家康への文

永禄三年〈1560年〉。駿府。駒(門脇文)は商人から、近々大きないくさがあるとの話を聞きます。「また、いくさですか」 と、駒はつぶやきます。 越前では、浪人の明智光秀十兵衛(長谷川博己)が寺で、子供たちに教えていました。授業を終えて家に帰ると、光秀…

『映画に溺れて』第372回 モダン・タイムス

第372回 モダン・タイムス 昭和四十七年十一月(1972)大阪 梅田 阪急プラザ劇場 赤狩りでハリウッドを逃れスイスで暮らすチャールズ・チャップリンに、一九七二年、アメリカのアカデミー賞名誉賞が贈られた。 その年、東宝系の映画館では「ビバ・チャッ…

大河ドラマウォッチ「麒麟がくる」 第十九回 信長を暗殺せよ

結果的に弟の信勝を殺すことになった織田信長(染谷将太)は、母の土田御前(壇れい)からひどくなじられます。信長は妻の帰蝶(川口春奈)にこぼします。「わしは父も、弟も、母も失った」 永禄元年(1558)。斎藤道三の死から二年がたちました。この年、近…