日本歴史時代作家協会 公式ブログ

歴史時代小説を書く作家、時代物イラストレーター、時代物記事を書くライター、研究者などが集う会です。Welcome to Japan Historical Writers' Association! Don't hesitate to contact us!

飯島一次

『映画に溺れて』第473回 ラッキーナンバー7

第473回 ラッキーナンバー7 平成十九年五月(2007)飯田橋 ギンレイホール 警察官役の多いブルース・ウィリスだが、殺し屋もまたよく似合う。『ジャッカルの日』のリメイク『ジャッカル』やコメディ『隣のヒットマン』はヒットした。 やはりウィリスが…

『映画に溺れて』第472回 第三の男

第472回 第三の男 平成二年三月(1990)三鷹 三鷹オスカー 見事な映画であり、あまりにも有名な作品である。 モノクロ映像の美しさ、巧みなストーリー展開、絵になるスターたち。そして、なによりも全編に流れるチターの名曲。この映画を観たことがない…

『映画に溺れて』第471回 偶然と想像

第471回 偶然と想像 令和三年十月(2021)渋谷 映画美学校試写室 洒落た短編小説を読むような面白さ。三つの短編によるオムニバスである。こんな偶然ありえない、と思うようなことがごく自然に納得できる形で起きてしまうのが映画の魔法なのだ。それは完…

『映画に溺れて』第470回 浜の朝日の嘘つきどもと

第470回 浜の朝日の嘘つきどもと 令和三年十二月(2021)飯田橋 ギンレイホール 私は映画が好きであり、映画は映画館で観たい。映画館が大好きなのだ。だが、近頃は家庭用の大型TVが普及し、DVDやネット配信も充実し、映画館へ全然行かない映画ファ…

『映画に溺れて』第469回 ベル・エポックでもう一度

第469回 ベル・エポックでもう一度 令和三年十二月(2021)飯田橋 ギンレイホール タイムトラベルサービス。客が好きな時代を選んで時間旅行。ただし、SFではなく、タイムマシンも仮想現実も出てこない。撮影所のセットと衣装や小道具を使い、無名俳優…

『映画に溺れて』第468回 ダークナイト

第468回 ダークナイト 平成二十年八月(2008)新宿 新宿ピカデリー 私の好きなバットマン俳優はティム・バートン監督の二作に出たマイケル・キートンである。バートンのグロテスクともいえるユーモア感覚に、とても善人には見えない面構えのキートンがぴ…

『映画に溺れて』第467回 シザーハンズ

第467回 シザーハンズ 平成二年十二月(1991)池袋 文芸坐 アメリカの郊外にある新興住宅地、カラフルな家々がまるでモデルハウスのように建ち並んでいる。そのすぐそばにそびえる小高い丘。丘の上の屋敷に住む発明家が人造人間を創造する。これはティム…

『映画に溺れて』第466回 マルコヴィッチの穴

第466回 マルコヴィッチの穴 平成十二年十月(2000)伊勢佐木町 横浜オスカー これぞ奇想天外という言葉がぴったりと当てはまる作品である。 なにしろ、実在のスター俳優、ジョン・マルコヴィッチの頭の中に入るトンネルが偶然に見つかり、マルコヴィッ…

『映画に溺れて』第465回 時計じかけのオレンジ

第465回 時計じかけのオレンジ 昭和四十七年九月(1972)大阪 難波 なんばロキシー 私のキューブリック初体験は『時計じかけのオレンジ』で、十八歳だった。主人公のアレックスは高校生の設定だからほぼ同世代である。 一九六〇年代末から七〇年代初めに…

『映画に溺れて』第464回 アンテベラム

第464回 アンテベラム 令和三年十一月(2021)日比谷 TOHOシネマズシャンテ 黒人女性を主人公としたふたつの世界の物語が描かれる。 アメリカ南部の農園で酷使される女奴隷のエデン。南部連合の旗が翻り、農場を支配するのは南軍の将軍とその配下の…

『映画に溺れて』第463回 騙し絵の牙

第463回 騙し絵の牙 令和三年三月(2021)新宿 新宿ピカデリー 出版不況と言われて久しい。本が売れて出版社も作家も町の書店も潤った時代は遠い昔のことだ。本が売れなくても雑誌が売れていればなんとかなっていたが、今はもう雑誌も売れない。この先、…

『映画に溺れて』第462回 最後の決闘裁判

第462回 最後の決闘裁判 令和三年十月(2021)立川 TOHOシネマズ立川立飛 ミステリアスな実録中世騎士物語である。 十四世紀末のフランス、ノルマンディーの騎士ジャン・ド・カルージュは留守中、屋敷で妻のマルグリットをかつての友ジャック・ル・…

『映画に溺れて』第461回 クーリエ 最高機密の運び屋

第461回 クーリエ 最高機密の運び屋 令和三年十月(2021)日比谷 TOHOシネマズ日比谷 イアン・フレミング原作の007シリーズがショーン・コネリー主演で映画化されたのが一九六二年、日本公開時のタイトルが『007は殺しの番号』だった。 米ソが…

『映画に溺れて』第460回 空白

第460回 空白 令和三年九月(2021)飯田橋 角川試写室 個性派の脇役として活躍する古田新太の主演作。劇映画なのに、最初の船で漁をするシーンから、まるでドキュメンタリーフィルムを観るようなリアルさ。 海に近い地方の町で漁師を営む添田は気が荒く…

『映画に溺れて』第459回 恋愛適齢期

第459回 恋愛適齢期 平成十六年四月(2004)銀座 丸の内東映 ジャック・ニコルソンとダイアン・キートンが共演、年配男女のラブコメディである。 ハリーは六十三歳のプレイボーイ。レコード会社を所有し悠々自適、結婚経験はなく、恋の相手は次々と変わ…

『映画に溺れて』第458回 ニノチカ

第458回 ニノチカ 平成八年十月(1996)銀座 銀座文化 グレタ・ガルボ。一九〇五年にスウェーデンで生まれ、二十歳でハリウッドに移り、サイレント全盛時代からトーキー初期に活躍し、三十五歳で引退、一九九〇年に八十四歳で亡くなった。私が映画館で観…

『映画に溺れて』第457回 赤ちゃん教育

第457回 赤ちゃん教育 平成十二年一月(2000)京橋 フィルムセンター大ホール ケーリー・グラント、キャサリン・ヘプバーン、いずれもハリウッドの大スターであり、美男美女である。このふたりがドタバタ喜劇を演じるのだから面白い。 若き古生物学者デ…

『映画に溺れて』第456回 愛しのローズマリー

第456回 愛しのローズマリー 平成十四年六月(2002)日比谷 日比谷映画 ともかく、美女が次々とたくさん出てくる映画である。 外見の美しい女性と心の美しい女性と、どちらがいいだろう。ジャック・ブラックふんするハル・ラーソンは女性の外見にしか興…

『映画に溺れて』第455回 2番めのキス

第455回 2番めのキス 平成十八年十月(2006)飯田橋 ギンレイホール ファレリー兄弟のラブコメディ『2番目のキス』に描かれたレッドソックスのファンというのは、日本でいえば、さしずめ大阪の阪神タイガースファンなのだと思う。 ベンは三十過ぎで独…

『映画に溺れて』第454回 エバー・アフター

第454回 エバー・アフター 平成十一年七月(1999)飯田橋 ギンレイホール 十九世紀、グリム兄弟が貴婦人の元へ呼ばれると、彼女はガラスの靴を見せ、例の「灰かぶり」の物語は本当にあった話だと語る。 十六世紀前半のフランス。実際にはヴァロア朝だが…

『映画に溺れて』第453回 ロック・ユー!

第453回 ロック・ユー! 平成十四年三月(2002)新橋 新橋文化 ヒース・レジャー主演の中世騎士物語。詩人のチョーサーやエドワード黒太子が登場するので、十四世紀のヨーロッパが背景である。 ウィリアムはイングランドの庶民出身で、騎士エクター卿の…

『映画に溺れて』第452回 グッドナイト&グッドラック

第452回 グッドナイト&グッドラック 平成十八年十月(2006)新橋 新橋文化 一九五〇年代、ジョセフ・マッカーシー上院議員による赤狩りは最初、多くのアメリカ国民の支持を得る。背景には冷戦状態にあるソビエト連邦の脅威があった。マッカーシーによる…

『映画に溺れて』第451回 偽りの隣人 ある諜報員の告白

第451回 偽りの隣人 ある諜報員の告白 令和三年八月(2021) 新橋 TCC試写室 これはふたりの男の友情の物語である。 ユ・デグォンは正義感の強い愛国者であり、国家安全政策部の諜報員として活動している。 イ・ウィシクは現政権に批判的な民主化運動…

『映画に溺れて』第450回 アナザーラウンド

第450回 アナザーラウンド 令和三年九月(2021)新宿 新宿武蔵野館 酒好きにとっては酒は百薬の長である。が、下戸にとっては百害あって一利なし、命を削る鉋とも言われる。なにごともほどほどがいいのだが、一線を越えると後戻りできなくなり、一気に破…

『映画に溺れて』第449回 フリー・ガイ

第449回 フリー・ガイ 令和三年八月(2021) 立川 シネマシティ2 フリーシティの銀行員ガイの一日は判で押したように規則正しい。朝、ベッドで目覚め、飼っている金魚に挨拶し、青いシャツに着替えて、出勤前にいつものコーヒーショップでいつものコー…

『映画に溺れて』第448回 レッド・ドラゴン

第448回 レッド・ドラゴン 平成十五年三月(2003) 所沢 シネセゾン所沢 『羊たちの沈黙』がヒットし、続編の『ハンニバル』が作られ、そして『レッド・ドラゴン』である。これは続編というより『羊たちの沈黙』以前の物語となっている。 FBI捜査官グ…

『映画に溺れて』第447回 羊たちの沈黙

第447回 羊たちの沈黙 平成三年十一月(1991)池袋 文芸坐 不気味な映画だった。おぞましい場面があるからぞっとするのではない。映像と音楽と俳優たちの演技で不気味な雰囲気を醸し出していた。 ジョディ・フォスターふんするFBI実習生クラリスがラ…

『映画に溺れて』第446回 キャラクター

第446回 キャラクター 令和三年六月(2021) 六本木 TOHOシネマズ六本木ヒルズ ホラー漫画を愛する青年がいる。山城圭吾は長年、著名な漫画家のアシスタントをしながら、なんとか独立して一本立ちしようと新人賞に応募し続けている。いつもいい線ま…

『映画に溺れて』第445回 プロミシング・ヤング・ウーマン

第445回 プロミシング・ヤング・ウーマン 令和三年七月(2021)立川 キノシネマ立川 凄惨な復讐劇でありながら、どことなくユーモラスで、方向が変わればラブコメディになっていたかもしれないと思わせる奇妙な味わいである。 カサンドラ・トーマス、通…

『映画に溺れて』第444回 夏への扉 キミのいる未来へ

第444回 夏への扉 キミのいる未来へ 令和三年六月(2021) 新宿 新宿ピカデリー ロバート・A・ハインラインの『夏への扉』は一九五〇年代に書かれた時間SFで、人工冬眠とタイムマシンが題材となっており、今でもファンが多い。 原作では一九七〇年と三…