日本歴史時代作家協会 公式ブログ

歴史時代小説を書く作家、時代物イラストレーター、時代物記事を書くライター、研究者などが集う会です。Welcome to Japan Historical Writers' Association! Don't hesitate to contact us!

大河ドラマウォッチ「いだてん 東京オリムピック噺」 第1回 夜明け前

 今年も軽くツッコんでいこうと思います。よろしくお願いします。
 1959年、落語家の古今亭志ん生ビートたけし)はタクシーにて寄席に向かっていました。渋滞で進めません。
 所変わって東京都庁田畑政治阿部サダヲ)は東京にオリンピックを呼ぼうと、神経質になっていました。そして場面はオリンピック開催地選考会の地、ミュンヘンへ。平沢和重(星野 源)が東京招致のためのスピーチを始めました。
平沢は日本の小学校の教科書を取り出して話します。「五輪の旗」という話が載せられている。そこにはこう書かれている。「全世界からスポーツの選手がそれぞれの国旗をかざして集まるのです。すべての選手が同じ規則に従い、同じ条件のもとに、力を競うのです。遠く離れた国の人々が、勝利を争いながら、仲良く親しみあうのです」。平沢はいいます。
「そのときがついに来ました。五輪の紋章に表わされた第五の大陸にオリンピックを導くべきではないでしょうか。アジアに」
そして東京にてオリンピックが開催されることが決定したのです。
翌年の1960年。志ん生は寄席でオリンピックの話をしていました。そして場面は1909年(明治42年)に移っていくのです。
柔道の創始者、そして後に日本スポーツの父と呼ばれる嘉納治五郎役所広司)はフランス大使館に向かっていました。嘉納は駐日仏大使のジェラールに、日本のオリンピック参加を要請されます。ジェラールはいいます。「オリンピックを欧米の白人だけのお祭りから、世界規模の平和の祭典にしたい」。
山本未來のナレーションが説明します。当時の日本は日清戦争日露戦争に勝ち、アジアの雄、そして神秘の国と世界に知られていました。
嘉納は日本をオリンピックに参加させるための適任者として選ばれたのです。
嘉納は職場である東京高等師範学校にやってきていました。嘉納はこの学校の校長だったのです。次のオリンピックが開かれる、スエーデンのストックホルムから、教授の永井道明杉本哲太)が帰ってきました。意外にも永井は、日本のオリンピック参加に反対します。日本人は体ができていない、と永井はいうのです。嘉納は質問します。そもそもオリンピックは楽しいのか、楽しくないのか。永井は答えます。
「体も心も未熟な若者に一国の命運を託するという意識が何を生むか」
 ドランドの悲劇、を永井は説明します。ロンドンオリンピックのマラソンにて、イタリア代表のドランドは四回も気を失い、死に体でゴールテープを切った。勝ち負けにこだわる人間の醜さを、競技スポーツの弊害を永井は見たという。
「面白くないねえ」
 と嘉納はいいます。肉体的に未熟な日本人が走ったら、
「死人が出ますよ」
 と永井は言い切ります。
 しかし諦めきれない嘉納は、文部省に掛け合います。そこで日本体育会会長、加納久宜に母体となる団体を頼もうとします。しかし即座に断られてしまいます。
「スポーツなど下らん」
 と加納はいいます。日本人に必要なのは体育だ。子どもたちに健康な肉体を授けるのがわれわれの使命だ。嘉納は言い返すことができませんでした。
 嘉納は銀行家、三島弥太郎の邸宅の、園遊会に参加していました。三島(小沢征悦)にオリンピックの説明をしようとすると、
「私はスポーツというものが、心底嫌いでしてな」
 といわれてしまいます。そこへ野球をやっていた青年が、ボールをキャッチしようと飛び込んできます。三島の弟の三島弥彦生田斗真)でした。
 野球を楽しんでいたのは天狗倶楽部と名乗る面々でした。次は相撲を取ろうと、上半身裸になります。
 って、西郷どんにつづいてまたしてもオバサマ方のハートをキャッチかよ。生田斗真を脱がせるとは、NHKの本気を感じます。
 ナレーションがいいます。
「明治の世に、こんなにウザくてチャラい輩がいるわけないと思うでしょうが、残念ながら実在したんです」
 帝大、早稲田、慶応などトップエリートが顔を連ねる、スポーツを愛する集団でした。
 しかし学校に帰ってきた嘉納は天狗倶楽部が気に入りません。「飲んだくれのアンポンタンめ」。と吐き捨てます。
 嘉納はオリンピックの参加を諦めることにします。フランス大使館にやってきました。大使のジェラールは、今、ストックホルムから届いたといって、スタジアムの見取り図を嘉納に見せます。ここに集まってスポーツを見る、とジェラールは説明します。
「見る」
 その発想に嘉納は驚きます。さらにジェラールはストックホルムオリンピックのポスターを見せます。そこには他国の国旗と共に、日の丸が描かれていたのです。嘉納はオリンピックの不参加をジェラールに申し出ることができませんでした。
「お受けいたします」
 と宣言してしまうのです。スポーツで国際的に交わることは、世界平和の実現に役立つでしょう。と嘉納は付け加えます。
 嘉納はオリンピックに向けて勝手に動き出します。嘉納のいる校長室に教授の永井と日本体育会会長、加納久宜がやってきます。加納はいいます。
「体育は教育。面白さなど不要」
 永井もいいます。
「勝ち負けにこだわるのは下である」
 嘉納は反論します。参加することに意義がある。国を背負ってだの、負けたら切腹だのというのはちがう。平和のための真剣勝負。
「相手を憎むのではなく、認めた上で勝とうとする。相互理解だよ。それがオリンピックの精神であり、日本の武道の精神だ」
 加納は、今の日本に、世界レベルの選手などおらん、といいます。嘉納は「おります」と反論します。どこに、という加納。「どっかに」という嘉納。
 嘉納の行動に、天狗倶楽部の面々は浮かれます。ビールを飲み、またしても上半身裸になります。
 って、サービスしすぎだろう、NHK。ここで肌脱ぎになる必要はあるのか。
 嘉納は天狗倶楽部に相談します。オリンピックに出るための選手を選考するための予選会を開くのはどうか。弥彦(生田斗真)がいいます。どうせなら東京のオリンピックを目指しましょう。
 こうしてオリンピックに送り込む選手を選抜するための運動会を開催することになったのです。
 当日となり、マラソン競技が、19名の選手によって行われました。雨の中、マラソン競技は、次々に脱落者を出していきました。そしてひとりの選手が戻ってきたのです。
「韋駄天だ」
 と嘉納は叫びました。タイムを計っていたところ、その速さは世界記録を更新していました。嘉納はゴールしたその選手を抱き留めます。山本未來のナレーション。
金栗四三。彼こそこのオリムピック噺の主人公なのであります」