日本歴史時代作家協会 公式ブログ

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2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『映画に溺れて』第360回 吹けよ春風

第360回 吹けよ春風 平成十一年四月(1999)京橋 フィムルセンター 三船敏郎といえば、剣豪や豪傑、凄腕の素浪人といった時代劇が多いが、その三船が主演のコメディタッチの現代劇。終戦からまだそんなに経っていない東京を舞台に、タクシーの運転手が見…

大河ドラマウォッチ「麒麟がくる」 第十一回 将軍の涙

天文十八年(1549)十一月。尾張の笠寺にて松平竹千代(後の徳川家康)と、今川に捕えられていた織田信広(織田信長の腹違いの兄)の人質交換が行われました。 尾張の末盛城では、織田家の家臣である平手政秀(上杉祥三)が、織田信秀(信長の父)(高橋克典…

『映画に溺れて』第359回 鬼火

第359回 鬼火 平成十九年一月(2007)阿佐ヶ谷 ラピュタ阿佐ヶ谷 怪談でもホラーでもないのに、これが妙に怖いのだ。 終戦後の東京。 加東大介ふんする主人公はガスの集金人である。昔は銀行の自動引き落としなどないから、受け持ち地区を一軒一軒、集金…

『映画に溺れて』第358回 怖がる人々

第358回 怖がる人々 平成二十四年一月(2012)池袋 新文芸坐 和田誠が監督した恐怖短編五話のオムニバス映画。「箱の中」深夜に酔って帰宅したサラリーマンが、マンションのエレベーターで偶然に知らない女といっしょになる。と、エレベーターが故障で止…

書評『まむし三代記』

書名『まむし三代記』著者 木下昌輝発売 朝日新聞出版発行年月日 2020年2月28日定価 ¥1800E まむし三代記 作者:木下 昌輝 発売日: 2020/02/07 メディア: 単行本 木下(きのした)昌輝(まさき)は2012年、デビュー作『宇喜多(うきた)の捨て嫁』…

『映画に溺れて』第357回 ひとひらの雪

第357回 ひとひらの雪 昭和六十一年十一月(1986)荻窪 荻窪劇場 昔、阿佐ヶ谷に住んでいたとき、隣町の荻窪にあった映画館、荻窪劇場で『ひとひらの雪』と『化身』の二本立が上映されていて、歩いて行ったことを思い出した。かつては歩いて行ける場所に…

『映画に溺れて』第356回 今度は愛妻家

第3356回 今度は愛妻家 平成二十二年一月(2010)渋谷 渋谷TOEI② ときどき、思いがけないどんでん返しのある映画があって、うれしくなるが、内容を語ることができない。推理小説の犯人をばらすのと同様に反則だから。 中には意外な結末ですよという…

『映画に溺れて』第355回 ファントマ電光石火

第355回 ファントマ電光石火 昭和四十七年七月(1972)大阪 中之島 SABホール 変装の名手の怪盗といえば、フランスではアルセーヌ・ルパン、日本では怪人二十面相が有名だが、もうひとり怪盗ファントマの活躍するフランス映画のシリーズがあり、私は…

『映画に溺れて』第354回 キル・ビル

第354回 キル・ビル 平成十六年三月(2004)飯田橋 ギンレイホール 私が所属している日本映画ペンクラブでアンケートがあった。好きな映画スター海外編。男優、女優、それぞれ三人を書いて提出する。私が選んだ女優はニコール・キッドマン、シャーリーズ…

大河ドラマウォッチ「麒麟がくる」 第十回 ひとりぼっちの若君

天文十八年(1546)、夏。京に望月東庵(堺正章)と共にいる駒(門脇麦)は、心ここにあらずの様子をしていました。そんな駒が伊呂波太夫(尾野真千子)の率いる、旅芸人の一座を見つけるのです。駒は台に張られた綱を見つめます。そこで見事な綱渡りを行っ…

『映画に溺れて』第353回 好きと言えなくて

第353回 好きと言えなくて 平成八年七月(1996)日比谷 シャンテシネ3 『シラノ・ド・ベルジュラック』を観て、思い出したのがこのラブコメディ『好きと言えなくて』 アビーはラジオのペット相談室のパーソナリティ。番組を通じてカメラマンのブライア…

第352回 モリエール 恋こそ喜劇

第352回 モリエール 恋こそ喜劇 平成二十二年十月(2010)飯田橋 ギンレイホール モリエールは演劇史上、シェイクスピアと並ぶ名高い劇作家である。が、私は昔、その戯曲を読んだとき、まるで吉本新喜劇のようだと思った。この映画でモリエールが演じる…

『映画に溺れて』第351回 シラノ・ド・ベルジュラック

第351回 シラノ・ド・ベルジュラック 令和二年二月(2020)築地 松竹試写室 ニューヨークは遠い。ブロードウェイの名舞台を観劇しようと思えば、旅費や滞在費、費やす時間がどれほどかかることか。そこでブロードウェイシネマである。 今回の作品は二〇…

『映画に溺れて』第350回 夜霧よ今夜も有難う

第350回 夜霧よ今夜も有難う 平成十三年一月(2001)浅草 浅草新劇場 名作『カサブランカ』のパロディで一番好きなのはウディ・アレンの『ボギー俺も男だ』だが、実は日本でも和製『カサブランカ』が作れている。石原裕次郎の歌う『夜霧よ今夜も有難う』…

『映画に溺れて』第349回 バーブワイヤー/ブロンド美女戦記

第349回 バーブワイヤー/ブロンド美女戦記 平成九年二月(1997)池袋 文芸坐 アメリカ合衆国が軍事独裁化した近未来。ただひとつ自由のはびこる悪の都市があった。まるで『ニューヨーク1997』のマンハッタンとそっくりな設定。 この悪の町で酒場を開…

『映画に溺れて』第348回 ブレードランナー

第348回 ブレードランナー 昭和六十三年八月(1988)三鷹 三鷹オスカー 環境破壊の進んだ未来。人間そっくりに作られた労働用のアンドロイドがレプリカント。アンドロイドには人間よりも強い体力が与えられているが、寿命がプログラムされているので長生…

『映画に溺れて』第347回 20世紀少年

第347回 20世紀少年 平成二十一年八月(2009)三軒茶屋 三軒茶屋シネマ 三軒茶屋には以前、映画館がいくつもあった。『20世紀少年』と『20世紀少年第2章』を二本立て通しで観たのも、この町だった。 小学生の子供たちが遊びで描いたディストピア…

大河ドラマウォッチ「麒麟がくる」 第九回 信長の失敗

天文十八年(1549)。尾張との和議のあかしとして、帰蝶(川口春奈)は織田信秀(高橋克典)の嫡男、織田信長(染谷翔太)のもとに嫁ぎました。 駿河では今川義元(片岡愛之助)が、尾張に攻め込む決意をしていました。竹千代(のちの徳川家康)の父である松平広忠(浅利…

『映画に溺れて』第346回 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツオトナ帝国の逆襲

第346回 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツオトナ帝国の逆襲 平成十三年四月(2001)有楽町 日劇東宝 クレヨンしんちゃんを初めて観たのはこの映画からである。二十一世紀の最初の年に作られた『嵐を呼ぶモーレツオトナ帝国の逆襲』はシリーズ中でも…

『映画に溺れて』第345回 ニューヨーク1997

第345回 ニューヨーク1997 昭和五十六年六月(1981)大阪 難波 南街文化 一九七〇年代のニューヨークは治安が最悪、犯罪率がうなぎ上りとなる。この事実を踏まえた一九八一年製作の近未来SFが『ニューヨーク1997』である。 一九九〇年代、犯罪…

『映画に溺れて』第344回 ソイレントグリーン

第344回 ソイレントグリーン 昭和四十八年十一月(1973)大阪 堂島 大毎地下 悲惨な二十一世紀である。時代設定は二〇二二年。国家は機能しなくなり、利益優先の企業が世界を支配している。 水も食料も不足し、本物の肉や野菜は高価すぎて庶民の口には入…

『映画に溺れて』第343回 TIME/タイム

第343回 TIME/タイム 平成二十三年十二月(2011)六本木 20世紀フォックス試写室 ユートピアの反対がディストピア。経済破綻と貧富の格差、環境破壊や核戦争による荒廃、人類増加による食料危機、コンピュータによる人間の管理、悲惨な未来を描いたS…

『映画に溺れて』第342回 13 ザメッティ

第342回 13 ザメッティ 平成十九年九月(2007)新橋 新橋文化 予備知識なく映画を観ると、残念なこともあるが、得することもある。『13 ザメッティ』が当たりだった。 フランスのどこか小さな町。移民の貧しい青年が雇われて民家の屋根を修理してい…

『映画に溺れて』第341回 カイジ ファイナルゲーム

第341回 カイジ ファイナルゲーム 令和二年一月(2020)新所沢 レッツシネパーク 暗い未来である。東京オリンピックのお祭り騒ぎが終わると、日本を大不況が襲う。物価は上昇し、町には失業者やホームレスが溢れる。貧富の格差は極度に広がり、ごく一部…

『映画に溺れて』第340回 幽霊繁盛記

第340回 幽霊繁盛記 平成二十二年六月(2010)神保町 神保町シアター フランキー堺といえば、川島雄三監督『幕末太陽伝』での居残り佐平次があまりに有名であるが、他に大学出の落語家を演じた『羽織の大将』などもあり、本人も桂文楽に師事していたほど…

『映画に溺れて』第339回 しゃべれどもしゃべれども

第339回 しゃべれどもしゃべれども 平成十九年六月(2007)池袋 シネリーブル池袋1 この映画は二度観ている。最初、池袋のシネリーブルで観て、そのあと、佐藤多佳子の原作小説を読み、もう一度、今度は飯田橋ギンレイホールで観たのだ。 私は映画と原…

大河ドラマウォッチ「麒麟がくる」 第八回 同盟のゆくえ

天文十七年(1548)。明智光秀十兵衛(長谷川博己)は尾張の地にいました。斎藤道三(この時は利政)(本木義弘)の娘である帰蝶(川口春奈)に頼まれ、夫になるかもしれない男、織田信長(染谷翔太)のことを調べに来ていたのです。 信長は小舟で漁に出ていました。明け…

『映画に溺れて』第338回 落語娘

第338回 落語娘 平成二十年九月(2008)新宿歌舞伎町 ミラノ3 呪いの落語。演じる落語家が次々に変死しているという事実。このだれもやらない落語に隠された魔力とは。ちょっと怪談仕立ての寄席話。 香須美は子どもの頃から落語が好きで、高校、大学と…

『映画に溺れて』第337回 ロング・キス・グッドナイト

第337回 ロング・キス・グッドナイト 平成九年七月(1997)高田馬場 早稲田松竹 アクション版『心の旅路』である、と私は思う。平凡な主婦という設定のジーナ・デイビス。長身で派手で目立つデイビス、見た目はあまり平凡とも思えないが。 サマンサは八…

『映画に溺れて』第336回 心の旅路

第336回 心の旅路 平成六年四月(1994)銀座 銀座文化 一階がシネスイッチ銀座、二階が銀座文化劇場、二階ではいつも懐かしの名画を上映していた。しかも初公開時のパンフレットの復刻版まで販売されていて、タイムマシンで過去の映画館に来たような気分…