日本歴史時代作家協会 公式ブログ

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2022-01-01から1年間の記事一覧

大河ドラマウォッチ「鎌倉殿の13人」 第22回 義時の生きる道

妻の八重の死を知り、義時(小栗旬)はつぶやきます。 「天罰だ」 三浦義村(山本耕史)がいいます。 「そんなふうに考えるな」 夜、義時は、息子の金剛にいいます。 「父が、お前を育て上げてみせる」 子どもたちが多く暮らす義時の館に、頼朝(大泉洋)が…

書評『宗歩の角行』

書名『宗歩の角行』著者 谷津矢車発売 光文社発行年月日 2022年4月30日定価 ¥1800E 宗歩の角行 作者:谷津 矢車 光文社 Amazon 文政3年(1820)8月、天野宗歩(あまのそうほ)は5歳で大橋本家十一代大橋宗金(後の大橋宗桂(おおはしそうけい)の門…

『映画に溺れて』第493回 メル・ブルックスの大脱走

第493回 メル・ブルックスの大脱走 平成二年二月(1990)中野 中野武蔵野ホール エルンスト・ルビッチが戦時中に作った反ナチコメディ『生きるべきか死ぬべきか』が日本で公開されたのが一九八九年、が、それより早い一九八四年にリメイク版『メル・ブル…

書評『戴天』

書名『戴 天』著者 千葉ともこ発売 文藝春秋発行年月日 2022年5月10日定価 ¥1800E 戴天 作者:千葉 ともこ 文藝春秋 Amazon 開元24年(736) 大唐帝国の首都長安の西市(長安城内の西側の商業中心地) 8歳の少年二人と6歳の少女の幼馴染みが遊んでい…

大河ドラマウォッチ「鎌倉殿の13人」 第21回 仏の眼差し

義時(小栗旬)は、夕暮れの鎌倉の街を見ていました。そこへ土肥実平(阿南健治)がやって来ます。 「どうした」 と、聞く土肥に 「九郎殿のことを、考えておりました」 と、義時は打ち明けます。 「わしもじゃ。平家とのいくさの間、ずっと共にいたもんでな…

『映画に溺れて』第492回 第十七捕虜収容所

第492回 第十七捕虜収容所 令和元年八月(2019)渋谷 シネマヴェーラ 戦争映画ではあるが、戦闘場面はなく、ビリー・ワイルダー監督らしいコメディ調で描かれた捕虜収容所のクリスマスストーリーになっている。 第二次大戦末期、ドイツ国内のドナウ川の…

『映画に溺れて』第491回 シンドラーのリスト

第491回 シンドラーのリスト 平成六年三月(1994)渋谷 渋東シネタワー2 相次いで娯楽作品を世に出しヒットさせたスティーヴン・スピルバーグが作った『シンドラーのリスト』は執念の一作といえるだろう。ハリウッドの映画人にはユダヤ系が多く、スピル…

大河ドラマウォッチ「鎌倉殿の13人」 第20回 帰って来た義経

文治三年(1187)。義経は、平泉にたどり着いていました。藤原秀衡(ふじわらのひでひら)(田中泯)が義経(菅田将暉)にいいます。 「よう戻って来たな。それにしても、悔やまれる。お前を送り出したとき、もし、わしが兵を挙げておれば。天下を目指すには…

大河ドラマウォッチ「鎌倉殿の13人」 第19回 果たせぬ凱旋

頼朝(大泉洋)から鎌倉入りを拒否された義経(菅田将暉)は、京に戻っていました。義経は妻の里(三浦透子)を相手に酒を飲みます。里は自分まで帰れないことに文句をいいます。 「離縁して下さい」と、里はいいます。「あの静(しずか)(石橋静香)という…

『映画に溺れて』第490回 否定と肯定

第490回 否定と肯定 平成二十九年九月(2017)六本木 アスミックエース試写室 人は誰しも失敗する。それを反省することで同じ過ちを繰り返さずに前に進めるのだ。歴史もまた同じである。過ちをなかったことにはできない。 都合のいい事実だけを抜き出し…

大河ドラマウォッチ「鎌倉殿の13人」 第18回 壇ノ浦で舞った男

一ノ谷で破れた平家は、四国の屋島に逃げました。 範頼軍は九州に渡り、筑前に攻め込みます。平家は逃げ道を断たれます。 義経は海を渡り、平家軍に奇襲をかけます。不意を突かれた平家は、屋島を捨て、長門(ながと)の彦島に落ち延びていきます。 鎌倉では…

『映画に溺れて』第489回 戦場のピアニスト

第489回 戦場のピアニスト 平成十五年三月(2003)渋谷 渋東シネタワー2 ナチスドイツによるユダヤ人の迫害、大虐殺の事実は繰り返し映画化されているし、繰り返し語り継がれるべき題材である。 さらに欲をいえば、シナリオが練られていて、演技がすば…

第三回「江戸歴史散歩」開催のお知らせ

新型コロナパンデミックを経験して3年目に突入しますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか? どんなに気をつけていても罹患するときには罹患する。100年ぶりに感染症が世界を席巻する今回の感染症の恐ろしさです。しかしこれは人類が何度も経験し、生き残り…

『映画に溺れて』488回 顔のないヒトラーたち

第488回 顔のないヒトラーたち 平成二十七年九月(2015)京橋 テアトル試写室 私が高校生の頃、『戦争を知らない子供たち』というヒット曲があった。戦後生まれの世代が若者となり、平和の中で生きている。北山修作詞のフォークソングは一種の反戦歌だっ…

大河ドラマウォッチ「鎌倉殿の13人」 第17回 助命と宿命

源義経(菅田将暉)は、後白河法皇(西田敏行)に呼ばれ、一ノ谷の合戦についてほめられます。 鎌倉では、頼朝が側近たちに話しています。 「義仲を討った今、片付けておかねばならぬことがある。一つは、甲斐の武田信義(八嶋智人)。奴に、誰が源氏の棟梁…

『映画に溺れて』第487回 ボン・ヴォヤージュ

第487回 ボン・ヴォヤージュ 平成十七年四月(2005)飯田橋 ギンレイホール 第二次大戦時のパリ陥落を背景にしたイザベル・アジャーニ主演のコメディ。厳しい戦時下が題材ながら、エスプリたっぷりのおしゃれなウェルメイドプレイになっており、これぞフ…

大河ドラマウォッチ「鎌倉殿の13人」 第16回 伝説の幕開け

義時(小栗旬)と八重(新垣結衣)の子に、頼朝(大泉洋)は「金剛」の名を贈ります。その席には義時の父、北条時政(坂東彌十郎)の姿もありました。頼朝が時政にいいます。 「よう帰って来てくれた。おぬしが一向に戻ってくれんので、藤九郎(安達盛長)を…

大河ドラマウォッチ「鎌倉殿の13人」 第15回 足固めの儀式

源義経(菅田将暉)は木曽義仲(青木崇高)を討つために、近江国にまで来ていました。 京で義経の軍勢が迫っていることを知った義仲は、後白河法皇(西田敏行)を捕え、御所に火を放ちます。 その頃、義時(小栗旬)は、父の北条時政(坂東彌十郎)のところ…

大河ドラマウォッチ「鎌倉殿の13人」 第14回 都の義仲

出かける北条義時(小栗旬)を八重(新垣結衣)が見送ります。 「正式に夫婦(めおと)となること、鎌倉殿(源頼朝)(大泉洋)と御台所(みだいどころ)(北条政子)(小池栄子)に申し上げたいのですが」 と、義時は八重の表情をうかがいます。八重は少し…

『映画に溺れて』第486回 わが教え子、ヒトラー

第486回 わが教え子、ヒトラー 平成二十一年六月(2009)飯田橋 ギンレイホール 総統アドルフ・ヒトラーに演説の指導者がいたという事実を膨らませて、コメディ風に仕立てたのが『わが教え子、ヒトラー』である。 大戦末期、一九四四年の年末、ベルリン…

大河ドラマウォッチ「鎌倉殿の13人」 第13回 幼なじみの絆

政子(小池栄子)の父である北条時政(坂東彌十郎)が伊豆へ帰ることになります。義時(小栗旬)や政子たちの前で、時政はいいます。 「やんなっちまったんだよ。何もかもが。悔やんではおらん」 頼朝のもとへ源行家(杉本哲太)がやって来ます。行家は所領…

『映画に溺れて』第485回 ヒトラーの贋札

第485回 ヒトラーの贋札 平成二十年六月(2008)高田馬場 早稲田松竹 第二次大戦中のナチス・ドイツの犯罪は様々な映画で描かれており、とりわけユダヤ人に対する大虐殺はドキュメンタリー『夜と霧』をはじめ、スピルバーグの『シンドラーのリスト』やポ…

『映画に溺れて』第484回 ソハの地下水道

第484回 ソハの地下水道 平成二十四年八月(2012)京橋 テアトル試写室 第二次大戦中、ナチスドイツ占領下のポーランド。ユダヤ人たちはゲットーと呼ばれる居住区に閉じ込められ、外へは出られない。いずれ収容所へ送られ虐殺される運命なのだ。一部のユ…

大河ドラマウォッチ「鎌倉殿の13人」 第12回 亀の前事件

義時(小栗旬)は八重(新垣結衣)に、八重の父である伊東祐親と兄である伊東祐清が死んだことを伝えます。そして義時が新しい領主となった、もとの伊東の領地、江間に来てくれるように八重に頼みます。八重は承諾するのでした。 義時の妹である実衣(宮澤エ…

書評『「賊軍」列伝 明治を支えた男たち』

書 名 『「賊軍」列伝 明治を支えた男たち』著 者 星 亮一発行所 潮書房光人新社発行年月日 2022年1月20日定 価 ¥790E 「賊軍」列伝 明治を支えた男たち (産経NF文庫) 作者:星 亮一 潮書房光人新社 Amazon 会津側の視点を踏まえ、明治政府に蔑まれた東北の…

『映画に溺れて』第483回 死刑執行人もまた死す

第483回 死刑執行人もまた死す 平成四年六月(1992)池袋 文芸坐 第二次大戦中の一九四三年にアメリカで作られた反ナチ映画。ドイツの支配下にあるチェコのプラハで「死刑執行人」の名で呼ばれる冷酷で残忍な総督ラインハルト・ハイドリヒが暗殺される。…

大河ドラマウォッチ「鎌倉殿の13人」 第11回 許されざる嘘

頼朝(大泉洋)が仲立ちをすると請け合い、北条義時(小栗旬)は八重(新垣結衣)と結婚するつもりになっていました。しかし 「お断りいたします」 と、八重からはっきりと拒絶されるのでした。 義時は頼朝の使者として、梶原景時(中村獅童)の館を訪ねます…

『映画に溺れて』第482回 イングロリアス・バスターズ 

第482回 イングロリアス・バスターズ 平成二十一年十二月(2009)新宿歌舞伎町 ミラノ2 パリがナチスに陥落された第二次大戦末期。米軍はレイン中尉をリーダーとするユダヤ系の精鋭部隊を極秘裏にフランス国内に送り込む。彼らの使命はひたすらナチスを…

大河ドラマウォッチ「鎌倉殿の13人」 第10回 根拠なき自信

鎌倉の仮御所で、頼朝(大泉洋)は義経(菅田将暉)と話します。 「奥州の、秀衡(ひでひら)殿の所には、何年おったのかな」 「六年おりました」義経はいいます。「こちらとは比べものにならいくらい、美しいところです」 頼朝は笑い声をたてます。 「鎌倉…

『映画に溺れて』第481回 エリン・ブロコビッチ

第481回 エリン・ブロコビッチ 平成十二年七月(2000)伊勢佐木町 横浜オスカー 大企業の垂れ流す有毒物質で地域の住民に多数の健康被害が発生した実話である。ジュリア・ロバーツ演じる主人公のエリン・ブロコビッチも実名で実在する。が、深刻にはなら…